心臓の肥満症TGCV患者を救う・1

 中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy;TGCV)は、心筋および冠状動脈に中性脂肪が蓄積することによって、重度の心不全、不整脈、虚血性心疾患などを呈する難病で、2008年、大阪大学平野賢一氏により重症心不全による心臓移植待機症例から見いだされた。その発見以降、同氏が立ち上げた大阪大学CNT研究室および厚生労働省、引き続く日本医療研究開発機構難治性疾患実用化研究事業TGCV研究班により、原発性TGCVの原因は、細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるAdipose triglyceride lipase(ATGL)の遺伝的欠損であること、また、ATGL遺伝子には変異がない特発性TGCVが存在することが明らかになってきた。そして、2015年3月に診断基準が公表されるなど、病態解明および治療法の開発が着実に進められつつある。

 TGCVの発見から10年を機に開催されたTGCV研究講演会「中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)研究10年の歩みと今後の展望ーアブラの病気をアブラで治す!」(11月17日)において、特発性TGCV患者を対象に中鎖脂肪酸含有製剤CNT-01の有効性と安全性を検討する多施設共同第Ⅱa相探索的臨床試験と、日本主導で展開するTGCV国際レジストリの概要が公表された。臨床試験の概要は千葉大学循環器内科診療講師の宮内秀行氏が、国際レジストリの準備状況は順天堂大学循環器内科先任准教授の島田和典氏がそれぞれ報告した。(関連記事「TGCV病態把握のための指標を開発」)