「リスクゼロが医師の責務」の呪いからの解放を

 加齢に伴う慢性疾患患者が医療の主体となった現在、医師が診療場面で遭遇する患者の大半が、完治するとは言い難いなんらかの症状やリスクを抱えている。そうした患者を診察する中で処方薬が増えてしまうのはなぜか。第10回日本プライマリ・ケア連合学会(5月17〜19日)のシンポジウム「多角的視点で語るポリファーマシー〜薬を飲むこと、処方することをもう一度考える」において東京医療センター臨床研修科医長/臨床疫学研究室長の尾藤誠司氏は、医師が薬を処方する行動心理を人類学的・行動経済学的視点から考察。医師は目の前の患者が抱える健康問題をなんとか解決したいと考えるが故に、「リスクや症状をゼロにすることが責務である」といった呪いにとらわれており、それがポリファーマシーを引き起こすとし、「こうした呪いを解き放つ方法を模索する必要がある」と述べた。