市中Clostridium difficileが出現!!!
- ドクターズアイ 仲田和正(総合診療)
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先日医局のみんなでCareNeTVの「Dr. 岡(秀昭先生)の感染症プラチナレクチャー」の「Clostridium difficile」を見たところ、以前とだいぶ様変わりしているのに大変驚きました。なお従来のClostridium difficileは厳密な意味でClostridium属ではないのだそうで2016年にClostridioides difficileの名に変更になりました。
今までC. difficile感染症(CDI)軽症にはメトロニダゾール(商品名フラジール、アネメトロ)、重症には経口バンコマイシン(静注ではない!)でした。両者とも耐性株はまれでした。ところが最近メトロニダゾール耐性のBI/NAP1/027株が増えてきて、米国ではバンコマイシンが第一選択になったというのです。岡先生によると、国内ではまだメトロニダゾールが有効なので従来通りでよいのでは、とのことです。
数年前N Eng J MedにC. difficile総説が確かあったよなと思い、探したところ、N Eng J Med (2015; 372: 1539-1548)にCDI(Clostridium difficile infection)の総説があり急遽読んでみました。著者は米・ハーバード大学の教育病院であるベス・イスラエル女子補祭病院の医師たちです。
バンコマイシンが効かない場合はフィダキソマイシン(ダフクリア、変な名前!200mg錠3,943.8円、2018年薬価収載)も登場しました。またなんと市中肺炎ならぬ市中C. difficileが登場、急激に増加しているというのです。これからは外来で下痢患者を見たらCDIも考慮するのです。
N Eng J Med総説「C. difficile感染」の要点は次の15点です。
- メトロニダゾールはC. difficileの治療薬だが原因でもある
- CDIの原因はABPC、AMPC、セフェム系、CLDM、キノロン系が多い
- CDIの1/3は市中感染!介護施設でCD芽胞は普遍的(手、聴診器、ベッド、電話)
- Clostridium diffcileは2016年よりClostrioides diffcileに変更
- CDはアルコール消毒無効で流水+せっけんを。個室隔離・グローブ・ガウン装着、退室後除染
- CD自体は非侵襲的。産生する外毒素TcdA、TcdBが大腸炎を起こす
- CDはBI/NAP1/027株の出現により死亡率は3倍になった
- 劇症CDIはWBC>1万5,000/μL、低Alb、急性腎障害。下痢止まり腹膨隆はtoxic megacolon!
- CDトキシン検査は下痢便に限る。普通便で検査・治療行うな! 治療後検査も不要
- CDI治療はBI/NAP1/027株がメトロ耐性、バンコ優位に。Fidaxomicin登場
- Probiotics (ラックビー、ビオフェルミン)がCDI予防に有効かも
- CDI軽症はメトロ、中等症はメトロ or バンコ、重症バンコ≠メトロ、再発リスク↑はダフクリア
- 再発CDIにダフクリア。ただしBI/NAP1/027株の以後の再発は防げない
- 再発CDIに糞便移植90%以上有効、合併症なし。BacteroidesとFirmicutesが重要?
- トキソイドからC. difficileワクチン作成中!