総まくり詳報! SGLT2阻害薬の新時代

研究の背景:SGLT2阻害薬の立ち位置がどんどんと上がってきた

 この10年で糖尿病臨床が大きく変わる中、最も毀誉褒貶に富む(時代的に扱いが変遷した)薬剤がSGLT2阻害薬であろう。発売当初は、第一選択薬あるいは第二選択薬としての処方すら許容されず、高齢者では使用すべきでない、女性も要注意である、肥満若年男性に限定すべきだ、などといった声が聞かれていたように思う。

 しかし、EMPAREG-OUTCOME試験(N Engl J Med 2015; 373: 2117-2128、関連記事「糖尿病治療薬の新時代―EMPA-REG OUTCOME試験発表!」)、CANVAS program(N Engl J Med 2017; 377: 644-657、関連記事「これでSGLT2阻害薬の心腎保護効果は確定」)、DECLARE-TIMI 58試験(N Engl J Med 2019; 380: 347-357、関連記事「3試験を比べて分かったSGLT2阻害薬の力量」)を通じて、"Pump, pipes, & filter"(Lancet 2019; 393: 3-5)といわれるように、糖尿病患者に対する心不全(pump)および腎機能(filter)への一次(発症)予防効果と動脈硬化症(pipes)への二次(再発)予防効果とが確認され、最近では、メトホルミンを超越して心血管リスクが高い糖尿病患者への一次治療薬としての処方が推奨されるに至っている(Eur Heart J 2020; 41: 255-323)。

 そんな中、昨年(2019年)から今年(2020年)にかけて、非糖尿病患者を対象に含む大規模ランダム化比較試験(RCT)において、SGLT2阻害薬の心不全や腎機能への有用性を示す結果が次々と報告された。

 今後、SGLT2阻害薬は糖尿病治療薬としてのカテゴリーを越えた薬剤になると思われ、N Engl J Medに掲載された3件のRCTの結果を総まくりしてご紹介したい。