個人ではなく環境を変える医療を!

 著作を通じて日本社会における健康格差の存在を指摘し注目を集めた近藤克則氏(千葉大学予防医学センター教授)は、第79回日本公衆衛生学会(10月20〜22日、ウェブ開催)で「健康の社会的決定要因」と題する講演を行った。それはSocial Determinants of Health(SDH)の訳語で、従来のバイオメディカルな医学観では無視されがちな患者の社会経済的要因(所得、教育歴、職業階層など)、人間関係要因(配偶者の有無、独居か否か、ネットワークなど)、環境要因(住宅、居住地域、ソーシャル・キャピタルなど)を指し、健康格差を生み出す主因と考えられている。同氏は、社会疫学の研究者として「社会疫学ではSDHを見いだして満足するのではなく、それを改善しうる介入方法の設計、評価を行うことが使命だ」と述べ、現在までの知見と実践を紹介した。