コロナ流行期の脳梗塞再開通治療の課題は?

 日本国内では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者数がいまだ増加の一途をたどっており、診療分野ごとにCOVID-19対応体制の構築が求められている。脳卒中分野においては、日本脳卒中学会が「COVID-19対応脳卒中プロトコル」(JSS-PCS)を作成し、医療従事者の安全確保を最優先とした診療指針を定めている。しかし、安全を確保するためのゾーニングの徹底や治療人員の制限は、急性期脳卒中再開通治療の所要時間を延長させ、患者の予後を悪化させるという懸念があった。神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科の福井伸行氏らは、JSS-PCSに沿った同院での対応が急性期脳卒中患者の治療時間や予後に及ぼした影響を後ろ向きに検討した結果を、第27回日本血管内治療学会(7月9~10日、ウェブ併催)で報告。COVID-19流行前やJSS-PCSに沿った対応を要さなかった症例と比べて、病院到着から再開通療法開始までの時間(door to puncture;D2P)の延長および院内死亡率が上昇する傾向が見られた一方、転帰良好率は変化を認めなかったと発表した。