「血液一滴から」の約束は果たされたか
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作業服姿の精密機器メーカー社員がノーベル化学賞を受賞し、日本中を驚かせたのは2002年だった。受賞理由は、それまで不可能とされてきた蛋白質を破壊せずにイオン化すること(ソフトレーザー脱離イオン化法)に成功し、質量分析(Mass Spectrometry)による計測の道を開いた業績である。受賞後の彼はマスコミへの露出を避け、「血液一滴で数百の病気の早期診断を可能にする」という夢の実現に邁進してきた。そして昨年(2020年)、世界初の血中アミロイドペプチド測定システムであるAmyloid MSTM CLが製造販売承認を受け、島津製作所から発売された。島津製作所エグゼクティブ・フェロー、田中耕一氏の研究の軌跡と医療への貢献を、第117回日本精神神経学会(9月19〜21日、ウェブ開催)の教育講演から紹介する。