マスク着用者の5割超に皮膚障害

 シンガポール・Nanyang Technological UniversityのLim Y. S. Justin氏らは、マスクの着用と顔面の皮膚疾患・障害との関連について検討するため、世界17カ国の観察研究37件・約3万例のシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。皮膚障害の有病率は55%を超え、特に痤瘡、皮膚炎、瘙痒、耳などの擦り傷の頻度が高かったとする結果をContact Dermatitis2022年8月18日オンライン版)に発表した。

欧州およびアジアの研究を解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大をきっかけに、世界各国で感染予防を目的としたマスクの着用が広がった。一方、これまでに数多くの横断研究でマスク着用とさまざまな皮膚障害に関連が示されている。

 そこで、Justin氏らはマスク着用に関連する皮膚障害の危険因子について検討するため、システマチックレビューとメタ解析を実施した。

 MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Registerのデータベースを用いて文献を検索し、基準を満たした観察研究37件・2万9,557例を解析に組み入れた。これらの研究は2004~22年に発表されていたが、ほとんどが2020年発表のものであった。研究の実施国は欧州およびアジアの17カ国で、東アジア地域の研究は7件(中国5件、韓国2件)だった。

最も強い危険因子は長時間のマスク着用

 解析の結果、顔面皮膚障害の有病率は55%だった。 特に報告の頻度が高かったのは座瘡、皮膚炎、瘙痒、擦り傷で、有病率はそれぞれ31%、24%、30%、31%だった。顔面皮膚障害発症の最も強い危険因子は4~6時間を超える長時間のマスク着用であった〔リスク比(RR)1.42、95%CI 1.31~1.54、P<0.001〕。

 この解析結果について、Justin氏らは「大規模集団において、マスク着用に起因すると考えられる皮膚障害の有病率は50%を超え、その頻度が高いことが分かった。また、マスク着用者のほぼ3分の1が痤瘡、皮膚炎、瘙痒、褥瘡を有することも明らかになった」と説明。「マスク着用に起因した皮膚障害患者の転帰を改善するには、適切かつ個別化された治療が重要である」と結論。その上で「この問題は過小評価されている可能性があり、さらなる研究を実施すべきである」と付言している。

(岬りり子)