乳がん患者でも大豆食品を食べてOK―中国の研究
2011年08月08日 17:04
【シカゴ】乳がん生存者の大豆食品摂取に関しては、安全でないと懸念する声もある中で、米バンダービルト大学医療センターのXiao Ou Shu氏らは「中国の乳がん既往のある女性では、大豆食品の摂取量と死亡および乳がん再発リスクとの間に逆の関連が認められた」との研究結果を、米医学誌「JAMA」(2009; 302: 2437-2443)に発表した。同氏らによると、大豆タンパク質の摂取量が1日11グラムまでは、量が多くなるほど死亡および再発のリスクが低下したという。
適度な摂取は安全
大豆食品には、乳がんのリスクを減少させると考えられているフィトエストロゲン(女性ホルモンのように機能する物質)の一種、イソフラボン類が豊富に含まれている。そのため、更年期障害などに効果があるといわれているが、イソフラボン類のエストロゲン様作用と、イソフラボン類と抗エストロゲン作用を持つ乳がん治療薬のタモキシフェンとの相互作用のため、これまで乳がん患者が大豆食品を摂取することを懸念する傾向があった。
Shu博士らは、大豆イソフラボン摂取と乳がん再発や生存との関連性を調べるため、中国の乳がん生存女性5,042例を対象とした大規模住民対象調査「上海乳がん生存調査」のデータを解析し、2002年3月~06年4月に乳がんと診断された女性(20~75歳)を対象に、2009年6月まで追跡調査を行った。
がんの診断・治療、診断後のライフスタイル、病状の進行についての情報を診断から約6カ月後に収集、さらに、聞き取り調査を18、36、60カ月後に行い、それらの情報を再評価した。追跡できなかった対象者の生存情報については、上海人口動態統計のデータベースから入手した。
外科的治療を受けた乳がん患者5,033例のうち、3.9年(中央値)の追跡では、総死亡444例、再発または乳がん関連の死亡534例が記録された。大豆食品の摂取量は、死亡および再発リスクと逆の関係にあった。
大豆タンパク質の摂取量が最も多かった群では、最も少なかった群と比べ、調査期間中の死亡リスクが29%、乳がん再発リスクが32%、それぞれ低かった。4年間の死亡率は、大豆タンパク質の摂取が最少と最多の女性でそれぞれ10.3%、7.4%で、4年間の再発率は11.2%、8.0%だった。
同博士らは「この逆相関は、エストロゲン受容体が陽性、陰性いずれの女性の場合にも認められた。また、タモキシフェン使用の有無も関係なかった。今回の研究では、大豆食品の摂取は安全で、乳がん患者の死亡率および再発率の低下と関連が認められた。大豆食品の摂取量と死亡・再発の関連は、大豆タンパク質が1日11グラムに達するまでは摂取量が多くなるほど低下し、それ以上では死亡・再発への効果は増加しなかった。適度な大豆食品の摂取は安全で、乳がん患者に有益なことが示唆された」と述べている。
大規模な研究が必要
米国立がん研究所(NCI)のRachel Ballard-Barbash氏らは、同誌の付随論評(2009; 302: 2483-2484)で「今回の研究は重要な情報を含むものの、摂取した大豆食品の品質、種類、量が中国と米国で異なること(1日のイソフラボン摂取量は平均でそれぞれ47ミリグラム、1~6ミリグラム)など、いくつか留意しなければならない相違点がある」と述べている。
同氏らは「Shu氏らの研究結果は、乳がん患者の大豆食品の摂取が安全であることを示しているが、乳がん患者と生存者のさまざまなタイプの人に対する大豆食品の影響を理解するには、より大規模な研究が必要だ。医療従事者は当面、乳がん患者に対し、大豆食品を食べても安全で、長い目で見れば健康を促進すると助言してもよい。しかし、効果があるのは大豆食品に限られており、大豆を含む健康食品のリスクや効果についてまで推定すべきではない」と説明している。
Medical Tribune紙 2010年2月11日号 掲載