メタボじゃなくても安心できない!―スウェーデン研究
2011年08月08日 17:11
【ダラス】スウェーデン・ ウプサラ大学病院のJohan Ärnlöv准教授らは、メタボリックシンドロームに該当しなくても、肥満(肥満指数=BMI 30.0以上)や過体重(BMI 25.0~29.9、小太り)の中年男性では心筋梗塞、脳卒中、若年死のリスクが高いとする研究結果を米医学誌「Circulation」(2010; 121: 230-236)に発表した。
長期追跡が重要
メタボリックシンドロームは、心臓病や糖尿病の原因となる要素が集まった状態。肥満やメタボリックシンドロームの心臓病リスクを検討したこれまでの研究では、メタボリックシンドロームに該当しない肥満者は高リスク群とされていなかった。
しかし、Ärnlöv准教授によると、こうした研究の追跡期間は13年以下で、メタボリックシンドロームに該当しない肥満者の心臓病リスクは10~15年経過後に顕著になってくる可能性があるという。
今回の研究では、追跡期間を30年に設定。1920~24年にウプサラで出生し、50歳時点で健康診断を実施した人で、糖尿病の既往や心臓病による入院歴のある人を除く1,758人を対象とした。
追跡期間中、681人が心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心不全による死亡または入院)を経験した。そのうち、心血管疾患(心臓や血管など循環器における病気)に関連した死亡は386例だった。年齢、喫煙歴、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)で調整後、メタボリックシンドロームの有無とBMIによる肥満もしくは過体重の組み合わせごとに、正常体重でメタボリックシンドロームに該当しない対照群と比較した。
正常体重でもメタボ該当でリスク上昇
その結果、対照群と比べた心血管疾患リスクの増大率は、(1)正常体重でメタボリックシンドローム群63%、(2)過体重で非メタボリックシンドローム群52%、(3)過体重でメタボリックシンドローム群74%、(4)肥満で非メタボリックシンドローム群95%、(5)肥満でメタボリックシンドローム群155%―だった。
同准教授は「正常体重でもメタボリックシンドロームに該当すればリスクが増大し、過体重と肥満の群ではメタボリックシンドロームに該当しなくてもリスクは増大した。医師は喫煙、コレステロール、血圧、体重などを含めた総合的なリスクを考慮する必要がある。肥満や過体重でも、他のリスクとなる要素がなければ減量の必要はないと指摘する研究者もいるが、今回の研究結果はこの考え方を支持していない」と述べている。
肥満・過体重の女性にも注意を
今回の研究では、メタボリックシンドロームの基準を登録時検診において、(1)耐糖能異常(空腹時血糖値110mg/dL以上)、(2)高血圧(最高血圧130mmHg以上および最低血圧85mmHg以上、または降圧薬治療)、(3)トリグリセライド(中性脂肪)150mg/dL以上、(4)HDLコレステロール(善玉コレステロール)40mg/dL未満、(5)BMI 29.4以上―のうち3項目以上の重積と定義した。通常、腹部肥満の指標として腹囲がメタボリックシンドロームの診断に用いられるが、今回の対象人口ではデータが入手できなかった。
また、女性ではこうした因子に関する長期データは存在しないが、Ärnlöv准教授は「女性の体重にも、他の心血管疾患のリスクになる要素と同様に注意を払うべき。まだデータがないからといって、メタボリックシンドロームに該当しない肥満女性が安全だと考えるべきではないだろう」と指摘している。
米国心臓協会(AHA)のスポークスマンであるBarry Franklin氏は「今回の研究結果は意外ではない。肥満が多くの危険因子を深刻化もしくは悪化させることは、以前から知られている。これまでの研究では、メタボリックシンドロームに該当しない肥満者ではリスクは増大しないことが示唆されていたが、今回の研究と比べると追跡期間がかなり短く、そうした研究結果が覆されたことは興味深い。今回の研究が以前のものと正反対の結果になった最大の理由は、長期追跡にあると考えられる」と指摘している。
今回の研究では、心血管疾患の減少が健康に対して果たす役割については論じられていない。Franklin氏は、肥満者に対して「たとえ5ポンド(約2.27kg)の減量でも、健康上の有意な恩恵が得られることを認識すべきだ」と強く呼びかけている。
Medical Tribune紙 2010年2月18日号 掲載