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米宗教集団で低いがん罹患率、特有のライフスタイルが影響

 2011年08月08日 17:13

 【コロンバス(米オハイオ州)】ドイツ系米国人などで構成される宗教集団「アーミッシュ」は、近代文明を拒否し、特有のライフスタイルを貫いている。そのアーミッシュのコミュニティー内ではがんを発症する割合(罹患率=りかんりつ=)が低いとの研究結果を、米オハイオ州立大学のJudith A. Westman教授らが医学誌「Cancer Causes & Control」(2010; 21: 69-75)に発表した。全米平均より44%低く、アーミッシュ特有のライフスタイルがリスクの低減をもたらしているという。

研究前の予想に反する結果

 アーミッシュはキリスト教の一派で、電気を使用しないライフスタイルが特徴。移動手段は徒歩か馬車、農耕や牧畜で自給自足の生活を送っている。オハイオ州には世界で最も多くのアーミッシュが住んでおり、ホームズ郡には約2万6,000人が居住している。彼らは皆、200年前にこの地に移り住んだ100人のアーミッシュの子孫だ。

 Westman教授らは、宗教的な信条や伝統によって一般社会との接触が限定されている特有のライフスタイルと、比較的小集団内での近親婚により、アーミッシュではがん罹患率が一般集団よりも高いと予想していた。しかし、今回の研究では全く逆の結果が得られた。アーミッシュの清廉厳格なライフスタイルが健康維持に貢献し、がんになる割合の低減に寄与していることが予想されている。

 同教授らは、ホームズ郡に住むアーミッシュの92家族(成人9,992人)にインタビューし、少なくとも3世代前まで親族のがん家系図を作成した。祖父母世代への聞き取りでは、彼らの先祖や子孫の情報も得られた。また、死亡証明書とオハイオ州がん罹患率監視システムに報告されたがん照合例の情報も収集。研究期間中に191人が、がんを発症した。同教授は「アーミッシュは閉ざされた小集団であるため、92家族をインタビューするだけで同郡の人口の90%をカバーすることができた」と述べている。

遺伝性疾患のリスク自体は高い

 アーミッシュの集団全体のがん罹患率は、オハイオ州全体のがん罹患率と比べて40%低く、全米のがん罹患率と比べて44%低かった。アーミッシュの成人における喫煙に関連したがんの罹患率は、オハイオ州の成人に比べて63%低く、喫煙と関連性のないがんについては28%低かった。がんの種類別では、子宮頸がん、喉頭がん、肺がん、口腔または咽頭がん、悪性黒色腫、乳がん、前立腺がんの罹患率は、オハイオ州全体よりも統計学的に有意に低かったという。

 Westman教授は「アーミッシュの集団では、多くの遺伝性疾患の罹患リスクが高かった。しかし、喫煙と飲酒が非常に少なく、性交渉の相手が限られているライフスタイルと、がん感受性を低くする遺伝子の影響で、多くのがんの発症を予防できているようだ」と述べている。アーミッシュのたばことアルコールの消費量は非常に少なく、彼らの多くは農業、建設業、工業などの肉体労働を中心とした仕事に従事している。

 一方、アーミッシュの多くは日光や紫外線に曝露される野外で働いて生活しているにもかかわらず、皮膚がんの罹患率が低い。この点について、同教授は「彼らは通常、作業をする際にはつばの広い帽子をかぶり、腕を守るために長袖の服を着ることが推奨されている。皮膚がんの低罹患率にも、それが影響しているのだろう」と述べている。

 Medical Tribune紙 2010年2月25日号 掲載

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