座ったままの生活は命取りに―スウェーデン研究
2011年08月08日 17:13
【ロンドン】スウェーデン・カロリンスカ大学病院のElin Ekblom-Bak氏らは、座ったままの状態で長時間過ごすと健康に悪い影響を及ぼすため、運動不足よりもむしろ日々活動しないことで引き起こされる害に注目すべきと、英医学誌「British Journal of Sports Medicine」の論評(2010; 44: 834-835)に発表した。同氏らによると、中等度から強度の運動をしても、さまざまな病気になる危険性は相殺されないという。
運動不足の場合はさらに不健康に
Ekblom-Bak氏らは「座ったままの状態は運動しないことを意味するが、より正確には"筋肉の無活動"を表す」と述べている。最近の研究によって長時間座ったままで全身の筋肉運動が不足すると、たとえ中等度~強度の運動を行ったとしても、肥満、糖尿病、心臓病、がん、すべての要因による死亡のリスク上昇と強く関連することが指摘されている。
また、オーストラリアの研究では、中等度の運動を行っているにもかかわらず、女性がテレビの前に座っている時間が1時間増えるごとに、糖尿病や心臓、血管の病気の前兆であるメタボリックシンドロームになる危険性が26%上昇することが示された。既に運動不足の人の場合、常に座ったままでいると、健康に対する悪影響はさらに大きいことも分かっている。
酵素の1つであるリポ蛋白リパーゼは、血液中の脂質の調節に重要な役割を果たしている。同氏らによると、これまでの研究から、常に座ったままでいることと不健康との関連性には、この仕組みが関与していることが明らかになっているという。
エスカレーターを使わないことも重要
Ekblom-Bak氏らは、座ったままで筋肉が無活動の状態が健康に悪影響を及ぼすという考え方を示している。つまり、常に座ったままでいることがもたらす結果は、運動不足がもたらす結果と同一ではない。同氏は「長時間、座った状態でいることによって引き起こされる体の分子的および生理学的反応は、運動をすることで単純に相殺することはできない」と指摘している。
さらに、同氏らは「将来的には、ガイドラインで運動を奨励したり、医師の診療の中で運動のアドバイスを行っていったりすることが重要となる。また、日常生活の中で活動レベルを保つよう奨励することも必要だ。例えば、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を上ること、座ったままの作業中に5分間の体を動かす休憩を入れること、または車を使わず歩いて買い物に行くことなどが、運動と同様に重要となるだろう」と述べている。
Medical Tribune紙 2010年2月25日号 掲載