メニューを開く 検索

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  過酷な競争教育で小学生に強いストレス―中国

疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」一覧

過酷な競争教育で小学生に強いストレス―中国

 2011年08月08日 17:13

 【ロンドン】英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)国際保健発達センターのTherese M. Hesketh教授らは「中国では過酷な競争教育により小学生の多くが強いストレスを感じ、3人に1人が頭痛や腹痛などのストレス特有の心身症状を週に1回以上経験している」と英医学誌「Archives of Disease in Childhood」(2010; 95: 136-140)に発表した。同教授らは今後、中国の若者に精神的問題が増加することを懸念している。

経済発展が親の期待を高める

 研究は、中国の東部沿岸に位置する比較的裕福な浙江省(人口4,800万人)の都市部と農村部に住む9~12歳の小学生2,000人超を対象に実施。Hesketh教授らは小学生に対し、過去1年以内に頭痛や腹痛を経験した頻度を質問した。なお、頭痛と腹痛は子供にストレスや不安があるときに最も誘発されやすい心身症状だ。

 また、学校に起因するストレスの度合いを測定するため、(1)学校が楽しいか、(2)試験が不安か、(3)成績でプレッシャーを感じるか、(4)宿題を終えることは困難か、(5)先生の罰が怖いか、(6)学校でいじめを受けるか、(7)家庭で親にたたかれるか―などを質問した。

 中国の急速な経済発展と一人っ子政策により、子供の将来の収入に対する親の期待が高まり、親には望めなかった教育の機会が増えたため、競争はより過酷になった。同教授らは、中国の教育制度は非常に競争が激しく、頻繁な試験、順位付け、大量の宿題が小学校から始まる上に、学習成績を非常に重視し、失敗に対する許容度は低いと指摘している。

長期の精神的影響を懸念

 質問に対する回答から、居住地域や性別にかかわらず、多くの小学生が多様なストレスを感じていることが明らかにされた。「学校が楽しいことはほとんどない」と回答した小学生は5人に1人(19%)で、ほとんどの小学生(78%)が「良い成績を取らなければならない」というプレッシャーを常に感じており、81%が「試験が非常に不安」と感じていた。「先生の罰が怖い」は約3分の2(63%)、「常にもしくはしばしば宿題を終えることが難しい」は4人に1人だった。

 小学生の約半数(44%)は「時々もしくは常に学校で身体的ないじめを受ける」と回答し、このいじめの報告は男子に多かった。「親にたたかれる」と回答したのは4人に3人(73%)に上った。

 小学生の3分の1超が頻繁に頭痛、腹痛を経験し、「週に1回以上頭痛を経験する」と回答した小学生は37%、「週に1回以上腹痛を経験する」は36%だった。心身症状はストレスと関連しており、ストレスレベルが最も高いと判定された8%では、最も低い小学生と比べて心身症状を経験する割合が4倍高かった。

 Hesketh教授らは「非常に競争的でプレッシャーが強い教育環境は、強いストレスの要因の1つと考えられる。小学生時代は学力だけでなく心身も養育する期間だろう。そのため、心や体への影響が懸念される。また、中国以外の国における多くの研究により、感情と行動に深刻な問題が認められた子供は、思春期と成人期に精神的問題が継続することが多いとの報告もあり、ストレスの短期的な悪影響だけでなく、長期的な影響も懸念される」と結論付けている。

 Medical Tribune紙 2010年3月4日号 掲載

ワンクリックアンケート

大阪万博まであと1年

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  過酷な競争教育で小学生に強いストレス―中国