喫煙で心臓病死やがん死が2~3倍に
2011年08月08日 17:13
【ダラス(米テキサス州)】米退役軍人局ボストン保健医療システムのDeepak L. Bhatt氏らは、心血管疾患(心臓や血管など循環器における病気)患者1万2,152例を対照に喫煙との関連性を検討した結果、「良好な医療を受けていても、喫煙は依然として心血管疾患による死亡やがんによる死亡の危険性を大幅に高める」と米医学誌サーキュレーション(Circulation 2009; 120: 2337-2344)に発表した。心血管疾患死およびがん死のリスクは、非喫煙者に比べて現喫煙者で2.26~3.56倍になったという。
喫煙を続けると死亡リスクが上昇
今回の研究は、国際研究CHARISMA※試験に参加し、心血管疾患を有する男女1万2,152例を(1)現喫煙群、(2)過去に喫煙したことのある喫煙経験群、(3)喫煙経験のない非喫煙群―の3群に分類し、これらの喫煙状況に基づき分析を行った。
対象は欧米人で、大半が白人。平均年齢は現喫煙群の60歳から非喫煙群の66歳までと、幅があった。また、被験者のうち20%が現喫煙者、51%が喫煙経験者、29%が非喫煙者だった。
3年にわたる研究期間中、現喫煙群では非喫煙群と比べ、心血管疾患死やがん死、すべての死因による死亡(全死亡)のリスクがいずれも大幅に上昇した(心血管疾患死2.26倍、がん死3.56倍、全死亡2.58倍)。また、同群では心筋梗塞や脳卒中リスクも高かった。
喫煙状況ごとのリスク上昇に男女差は認められなかった。また、喫煙経験群と非喫煙群の間に、心血管疾患死または全死亡のリスク上の有意差は認められなかった。がん死リスクについては非喫煙群と比べて喫煙経験群で高かったが、現喫煙群と比較すると喫煙経験群の方がかなり良好な成績を示したという。
研究責任者のBhatt博士は、今回の結果を受けて「心血管疾患患者が喫煙を続けると短期間に死亡するリスクが高まるという、強固なエビデンス(根拠)が得られた」と述べた。さらに「高齢になって、疾患が重篤化してから禁煙を試みるよりも、直ちに禁煙することを勧める」と強調。「この研究は、喫煙者の禁煙に弾みを付けるのが狙い。禁煙すると、根強いがんリスクを有する患者でも比較的早期にリスク低下の恩恵が得られる」と指摘している。
現喫煙者に抗血小板薬が有効
Bhatt博士らは今回の研究の一環として、広範囲に使用されている抗血小板薬(血を固まりにくくする薬)のクロピドグレルの治療効果に、喫煙が影響するか否かについても調べた。
その結果、クロピドグレルは、喫煙経験群や非喫煙群よりも現喫煙群にとってより有益であることが示された。同薬は、現喫煙群において全死亡と心血管死を有意に低下させたが、喫煙経験群や非喫煙群に対する効果は限られていた。ただし、現喫煙群ではクロピドグレル療法の効果は高かったものの、非喫煙群と比べて依然出血リスクが高かったという。
※Clopidogrel for High Atherothrombotic Risk and Ischemic Stabilization, Management and Avoidance.
Medical Tribune紙 2010年3月18日号 掲載