10種のがんでリスク上昇

　高身長とがんリスクとの関連性はこれまでの研究結果でも示されているが、今回はより多くのがん種について、さまざまなライフスタイルや社会経済的背景を持つ女性のデータが検討された。今回の結果は、20世紀に人類の平均身長が伸びたことが、がん発症率の変化に何らかの影響を及ぼしている可能性を示すものだ。

　Green氏らは、身長ががんの発症リスクおよびがん種別のリスクに与える影響を明らかにするため、1996～01年に行われた研究の女性参加者129万7,124人を対象に、身長および他の要素とがん発症との関連について検討した。9.4年間（中央値）の追跡調査で、9万7,376人ががんを発症した。

　解析の結果、10センチの身長増加するごとにがんを発症するリスクは1.16倍上昇した。また、がんの種類別の解析では、がん17種のうち15種で高身長によるリスク上昇が認められ、15種中10種（結腸、直腸、乳房、子宮内膜、卵巣、腎臓、中枢神経系、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、白血病）では、10センチの身長増加ごとのリスクは統計学的有意に上昇した。

　なお、10センチの身長増加するごとのがん発症リスクは、社会経済的地位などの個人特性による影響は受けなかったが、非喫煙者と比べて喫煙者ではリスクが低かった。また喫煙者では、喫煙と関連するがんの種類と身長との関連が他のがんに比べて弱かった。

世界各地で同様の関連

　さらに、今回の研究と他の10件の研究を統合した解析を行ったところ、今回認められたすべてのがんと身長との関連性は、欧州、北米、オセアニア、アジアの世界各地で同様に認められた。

　Green氏は「高身長とがんリスク上昇との関連は、さまざまな種類のがんや異なる人種で共通して見られることから、人間の成長期の段階での共通したメカニズムがあるのではないか」と考察している。

　身長は成長ホルモンレベルや遺伝的要因のほかに、食事や小児期の感染症などの環境要因に規定される。同氏らは「身長は変えられないし、高身長は心臓病など他の病気になるリスクが低いことも示唆されている。今回の結果は、がんを発症する仕組みを理解する一助となり得るという点で重要だ」と述べている。