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運転中の心臓発作をいち早くキャッチ―トヨタなどが開発

 2011年09月30日 16:59

 自動車事故の原因には,飲酒や脇見運転といった不注意以外に,突然発生する心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの医学的原因も挙げられる。後者のような事故を予防するには、リスクが高い人の運転を制限する以外に手立てがないと考えられていたが,このほど,運転中の心臓発作予知機能を搭載した車両が開発された。トヨタ自動車の開発公募に対し,日本医科大学の加藤貴雄教授(内科学)が発案し,さらに高精度の心電信号と脈波をハンドルから記録・解析する技術をデンソーが開発。第28回心電図学会,第26回日本不整脈学会などによる合同学会(9月18~22日,福岡市)の開催期間中,会場内に実車が特別に展示され,参加者の注目を浴びた。

重症不整脈を運転者にお知らせ

 今回開発された車両には,ハンドルの左右に心電センサーおよび光電脈波センサーが埋め込まれている。運転者がハンドルを握ると、心電信号と脈波、心拍数が同時に記録される。

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 心電信号の取得については,電位差を計測するために,両手でハンドルを握っていることが必要。脈波については,皮膚に当たった光に対する毛細血管内ヘモグロビンの反射光をとらえて脈動を見るもので,心電図と脈波を同時に記録することによって解析精度を高めている点が今回の開発の大きな特徴だという。

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 一方,加藤教授ら日本医科大学のチームは,小型心電図測定装置を装着中に突然死した30人の心拍変動周波数の解析結果から,心臓発作の発生直前にV字型の特徴的な変化が現れることを発見しており,さまざまな不整脈発生時はもちろん,心臓発作に先行するこのような異常所見が確認された際には,運転者に注意を促すシステムも構築されている。

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 この一連の技術については,すでに米国で特許を取得しているという。

発売に道路交通法と薬事法の壁

 今年7月にトヨタが新技術発表会でこのシステムを公開した際には,多くの欧米紙に紹介されるなど国際的な関心も集めたが,実用化されるには,これまでも医薬品・医療機器の開発・新技術導入のたびにネックになってきた日本の厳しい規制が立ちはだかっている。

 医学的判断が加えられるこの車が公道を走れるようになるまでに,道路交通法のほか,薬事法でも承認を得なければならない可能性がある。加藤教授は,特区などの制度を活用して「少しでも早く実用化してほしい」と希望している。新技術の開発は日進月歩であり,国内の承認作業に手間取っている間に海外メーカーの開発車,あるいは今回の車の海外での利用が先行しかねない。

 同教授は,現状では自動車の運転が制限されている除細動器やペースメーカーを付けている患者はもちろんのこと,心臓病などで不安を抱え,運転を控えている人も安心して運転できるようになるほか,運転者の日々の健康管理にも使えると、その有用性を訴えている。さらに,心臓発作の早期把握や予知による事故の回避で,運転者だけでなく第三者を巻き込む重大な事故の抑制につながることが期待されるが,そのためにも国内の承認作業が迅速に進むことが望まれる。

(編集部)

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