摂食・嚥下障害の予防方法は?
2011年10月11日 12:01
摂食・嚥下障害を予防する方法はありますか?
(女性 30代)
摂食・嚥下障害は、その原因・症状に応じた対応が求められるため、早期に気づくことが大切です。
摂食・嚥下(えんげ)とは、水分や食べ物を口の中に取り込んで、咽頭(いんとう)から食道・胃へと送り込むことです。これらの過程のどこかがうまくいかなくなることを摂食・嚥下障害といいます。実際には、「食べ物を見ても、食べ物を口に運んでも反応しない」「食べ物を口に取り込み、かみ砕き、飲み込むことがうまくできない」「食べ物が気管に入ったり(誤嚥=ごえん)、食道につかえたりする」ことが生じます。
摂食・嚥下障害は、何らかの原因となる病気から生じる症状の1つであり、さまざまな病態の総称です。その原因・症状に適した対応が求められます。摂食・嚥下障害に気付くことが大切で、実際に気付いたら早めに専門家を受診しましょう。
摂食・嚥下障害の原因は、大きく3つに分けられます。
- 器質的原因:口腔や舌、食道など食物の通路の構造に問題がある場合。例えば、う蝕(虫歯)、歯周炎、義歯(入れ歯)の不適合、口内炎、口腔がんなど。
- 機能的原因:食物の通路の動きに問題があり、うまく送り込むことができない場合。例えば、脳梗塞、脳出血、脊髄小脳変性症、パーキンソン病、薬剤の副作用(向精神薬、抗コリン薬、鎮静薬など)など。
- 心理的原因:摂食・嚥下困難を訴える患者さんのうち、理学的所見や検査上明らかな異常が認められない場合。例えば、認知症、心身症など。
症状としては、(1)よだれが出る、(2)むせやすい、(3)食べ物が口からこぼれやすい、(4)うまくかめない、(5)スムーズに飲み込めない、(6)鼻へ逆流する、(7)口の中に食べ物が残る、(8)急に食べ物を吹き出す、(9)食事に時間がかかる、(10)食事量が少ない―などがあります。本人の訴えは「むせる」「つかえる」「喉の奥のほうに食べ物がつかえる」などです。
食欲不振、拒食、脱水(口腔内乾燥、尿量の減少など)、食事時間が長くなる、痰(たん)の量の増加、食後の声の変化(嗄声=させい。かすれ声)、夜間の咳、呼吸状態、体重減少、元気がないなどの変化に関心を持つことが大切です。本人や家族が気づかずに自覚的な訴えがない場合や、認知症などのために自分の状態を伝えることができない場合も多く、注意が必要です。場合によっては低栄養、脱水、誤嚥性(ごえんせい)肺炎のような全身に悪影響を及ぼす状態や、窒息などで生命の危機に陥ることがあります。
【摂食・嚥下障害の問題点】
摂食・嚥下障害の問題点として以下のことが挙げられます。
- 低栄養:摂食・嚥下障害により食べ物の摂取量が低下すると、低栄養、体重減少を生じます。
- 脱水:摂食・嚥下障害により経口水分摂取量が低下すると、脱水を引き起こします。
- 誤嚥性肺炎:食べ物と一緒に口腔や咽頭内の細菌を誤嚥することによって、肺炎になります。
- 窒息:誤嚥によって食べ物が気道を塞ぐと呼吸が困難になり、窒息を引き起こすことがあります。
【摂食・嚥下障害の留意事項】
摂食・嚥下障害に対し一般的に気を付ける点として以下のことが挙げられます。
- 脳卒中など摂食・嚥下障害を起こす全身疾患に罹患しないように健康管理に気を付けましょう。また全身的な活動量を維持し高めることは、食欲も促進します。生活を活性化させることが大切です。
- 口腔を含め機能を維持するために、口腔体操(顔面マッサージ、顔面・口唇・舌運動等)、首や肩の運動、呼吸体操も効果的ですので、それらを意識して行うとよいでしょう。
- 話すことと、食べることは似かよった動きであるため、発音や発声の練習も効果的です。よく話すことが維持につながります。
- 口腔ケアを丁寧にこまめに行いましょう。口腔機能を刺激することにもなります。義歯(入れ歯)の清掃も重要です。電動歯ブラシの使用に慣れておくこともお勧めします。
- 歯科に受診し、う蝕、歯周病の予防や適切な義歯を作製してもらいましょう。咬合(こうごう=かみ合わせ)状況を良好に保つことが大切です。定期的に検診を受けるとよいでしょう。
- 食事姿勢の配慮:食事の際は、良い姿勢をとりましょう。不良姿勢は誤嚥のもととなります。
- 食事内容の配慮:高齢者は総じて飲みにくく、食べにくくなってきます。軟らかくしたり、とろみをつけたり、大きさを一口大にしたり、場合によっては水分の補給方法にも配慮するなど、食べ物の形態を工夫しましょう。