女性のうつ病患者で脳卒中リスク上昇か―米研究
2011年10月25日 11:27
米ハーバード大学(ボストン)公衆衛生学部のAn Pan氏らは、女性のうつ病患者は脳卒中を発症するリスクが高くなる可能性があると米医学誌「Stroke」(2011; 42: 2770-2775)に発表した。うつ病にかかったことのある人は、ない人に比べて脳卒中リスクが29%高く、特に抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を服用している場合は、リスクが39%上昇したという。
「抗うつ薬自体が主なリスクではない」
Pan氏らは今回、米国の女性看護師を対象とした研究の参加者のうち、脳卒中にかかったことのない8万574例を、2000年から6年間追跡した。うつ病の基準は、「MHI-5」と呼ばれる診断基準で52点以上、医師によるうつ病診断、抗うつ薬服用の有無と薬剤の種類についての患者報告とした。
その結果、6年間に1,033人が脳卒中を発症(虚血性538人、出血性124人、不明371人)し、そのうちうつ病患者は306人。年齢、高血圧、脂質異常症、糖尿病などで補正したところ、うつ病にかかったことがある人では、脳卒中リスクが29%高くなることが分かった。さらに、SSRIを服用していた人ではリスクが39%高かった。
研究責任者で同大学予防医学のKathryn M. Rexrode准教授は「抗うつ薬の使用はうつ病の重症度の指標になり得る」とした上で、「抗うつ薬自体が主なリスクであるとは考えていない。今回の研究は、脳卒中リスクを減らすために服薬の中止を提案するものではない」と述べている。
健康的な生活習慣の維持が困難
Rexrode准教授は「うつ病があると、糖尿病や高血圧をはじめとする他の病気の管理や、規則正しい服薬、運動などの健康的な生活習慣の維持が困難になりやすい。これらの要素はすべて、脳卒中リスクの増加に影響する可能性がある」と考察した。
一方、Pan氏は「うつ病患者で脳卒中リスクが高まる可能性があると広く認識されるようになれば、うつ病の治療だけでなく高血圧や糖尿病、コレステロール高値などの脳卒中危険因子の管理や、喫煙や身体活動(日常生活の中で体を動かすこと)などの生活習慣にも医師が注意を向けるようになるのではないか」と述べている。
(編集部)