精神刺激薬で睡眠不足時の記憶・判断力が向上
2011年12月13日 15:40
長時間睡眠を取っていないと、記憶力や判断力が低下し、さまざまな事故やミスを犯す可能性が高くなる。英インペリアルカレッジ外科学・腫瘍学のColin Sugden講師らは、睡眠不足の医師を対象にナルコレプシーに使われる精神刺激薬モダフィニル(商品名モディオダール)が、こうした疲労による影響を緩和するかどうか調べるための研究を実施。その結果、モダフィニルは限られた時間内での迅速な情報処理、柔軟な思考、的確な判断が求められる状況において有効である可能性が示されたという。詳細は、10月12付の米医学誌「Annals of Surgery」(電子版)に発表された。
精神運動作業能力では改善見られず
1970年代に発見されたモダフィニルは、英国ではナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、交代勤務睡眠障害に関連した過度の眠気治療に処方されている(日本ではナルコレプシー治療のみ)。
今回の研究は、一晩中睡眠を取らなかった医師39人を対象とし、モダフィニルを投与する群(20人)と偽薬を投与する群(19人)のいずれかに割り付けた。記憶力や判断力に関しては作業課題(CANTAB)で評価し、精神運動作業能力については低侵襲手術シミュレーション訓練装置を使って検討した。
その結果、CANTABでは、偽薬群に比べてモダフィニル群の方が作業記憶と計画性の成績に優れ、衝動的な判断を下すことも少なく、さらに作業中の課題変更にもより柔軟に対応していた。一方、精神運動作業能力については、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった。
長期試験による確認必要
以上のことから、Sugden講師は「確かにモダフィニルの服用により、睡眠不足の医師の記憶力や判断力が改善する可能性が示された。しかし、今回の研究は小規模で短期間だったため、結果の解釈は極めて慎重に行う必要がある」と指摘。さらに、対象となった医師がもともと備えている能力との関連が考慮されていないことにも言及している。
また、今回の研究は1回投与による身体上・精神上の健康と作業遂行能力への短期的な影響を調べたもので、何度も投与した場合の効果を調べることは検討されていないと説明した上で、「睡眠不足の医師への効果について結論を下すには、長期的なモダフィニルの投与の有効性と安全性を評価する必要がある。薬剤投与に伴う倫理的な問題も残されている」と述べた。
(編集部)