水ぼうそうが流行、過去10年間で第3位を記録
2011年12月15日 15:40
国立感染症研究所は12月9日掲載の感染症週報第47週(11月21~27日)で、水痘(すいとう=水ぼうそう)の定点当たり報告数が10月から増加し続けており、47週には1.77と、2001年以降の報告数としては03年、10年に次ぐ多さを記録したとして、注意を呼び掛けている。水痘ワクチンは日本で開発されたにもかかわらず、いまだに接種率は20~30%と低く、毎年約20万人の患者が発生している。
「国内のまん延状況をコントロールするには程遠い」
感染研によると、水痘の定点当たり報告数の増加は第42週(10月17~23日)から続いており、47週には1.77を記録。これは03年、10年に次ぐ多さで、38都道府県で前週よりも増加が見られているという。
また、11年第1週からこれまでに報告された累積報告数は20万620人で、男性が10万4,659人(52.2%)、女性が9万5,961人(47.8%)と男性がやや多い。この調査は小児科の報告に基づいて行われており、年齢群別の報告数では、5歳以下が全体の85%以上を占めている。
同週報では、水痘を「通常は小児期に好発する予後良好な疾患」としながらも、合併症には敗血症を含む最近の二次感染、髄膜脳炎、小脳失調、肺炎、肝炎などがあり、成人では重症化することも多いと警告している。また、免疫抑制状態にある人にとっては致死的な影響があるほか、自然感染で治癒した場合、約20%の人が年齢を経て帯状疱疹(ほうしん)を発症する可能性があることも示されている。
さらに、水痘ワクチンが世界に先駆けて日本で開発されたにもかかわらず、予防接種法で「任意接種」に位置付けられているため、接種率が低いことも指摘。実際の接種率は20~30%との報告もあり、そうした状況を打開するための多価ワクチンの開発も進められている。同週報では、「国内におけるまん延状況をコントロールするには程遠いと言わざるを得ない」とのコメントも記されている。
米国では四種混合+肺炎球菌ワクチンの臨床試験も
一方、米国では日本で開発された水痘ワクチンの接種を1995年からは1回、06年からは2回、小児の定期接種プログラムに組み入れており、現在では90%以上の接種率を維持している。それに伴い、全年齢で水痘関連死を制圧したことや、定期接種対象外の乳児における水痘合併症発生率が低下するなどの効果も報告された(「Pediatrics」2011; 128: 1071-1077)。
また同時期に、1歳から1歳半の子供を対象とした、現在米国で用いられているムンプス(おたふく風邪)・麻疹(ましん=はしか)・風疹(ふうしん=三日ばしか)・水痘の四種混合(MMRV)ワクチンに肺炎球菌7価ワクチンを加えた五種混合ワクチンの臨床試験に関する成績も報告されている(「Pediatrics」2011; 128: e1387-1394)。
(編集部)