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臓器移植者のがんリスクは一般人口の2倍―米研究

 2012年02月29日 10:08

 米国立がん研究所(NCI)のEric A. Engels氏らは「腎臓、肝臓、心臓、肺などの固形臓器移植を受けた患者が、さまざまな種類のがんを発症するリスクは一般人口の2倍である」との研究結果を、米医学誌「JAMA」(2011; 306: 1891-1901)に発表した。

発がんレシピエント1万人を検討

 固形臓器移植のレシピエント(受給者)は、免疫抑制や発がん性ウイルス感染のためにがんにかかるリスクが高い。Engels氏らは「移植レシピエントにおけるがんリスクの理解が深まれば、がんの原因がより明らかになり、移植の安全性向上につながるかもしれない」と述べている。

 同氏らは今回、固形臓器移植後に発症するがんのパターンを総合的に検証する試験を実施した。1987~2008年の全米移植レシピエント研究登録と、全米13州と諸地域のがん登録から固形がんを発症したレシピエントに関する関連データを用い、一般人口とのがん発症率を比較した。

 対象移植数は17万5,732件。レシピエントの大半は男性(60.9%)で、移植時の平均年齢は47歳だった。移植臓器で多かったのは腎臓(58.4%)、肝臓(21.6%)、心臓(10.0%)、肺(4.0%)だった。追跡期間中にがんを発症したレシピエントは1万656人で、解析の結果、一般人口と比べたがん全体のリスクは2倍だった。

32種類のがんでリスクが増加

 リスクが増加していたがんは32種類で、感染に関係したがん(肛門がん、カポジ肉腫など)や感染とは無関係のがん(メラノーマ=悪性黒色腫=、甲状腺がんなど)もあった。発がんリスクが特に高かったのは非ホジキンリンパ腫(1,504例)、肺がん(1,344例)、肝臓がん(930例)、腎臓がん(752例)などで、これらを合わせると移植レシピエントのがんの43%を占めるが、米国の一般人口では21%だった。

 非ホジキンリンパ腫リスクは、一般人口に比べてすべての臓器のレシピエントで上昇していた。肺がんでは、肺レシピエントでのリスク上昇が最も高かったが、他の臓器(腎臓、肝臓、心臓)のレシピエントでも上昇が認められた。一方、肝臓がんリスクは肝臓レシピエントでのみ上昇していた。腎臓がんリスクは腎臓レシピエントで最も高かったが、肝臓と心臓のレシピエントでも上昇が見られた。

 Engels氏らは「大規模登録データを用いた今回の研究により、移植レシピエントにおけるさまざまながんリスクの状況が明らかになった。発がん性ウイルスに対する免疫コントロールが失われたために発症するがんもあれば、感染とは無関係に発症するがんもある。そのほか、発がんに寄与する因子として、慢性的な免疫障害や炎症、基礎疾患、薬剤毒性などもある種のがんには関係している可能性がある」と述べた上で、「移植レシピエントの予後改善のために、この集団におけるがん予防と早期発見への新たな方法の開発が求められている」と指摘した。

(編集部)

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