安静はかえって体に毒―呼吸器疾患のリハビリ
2012年03月15日 10:58
慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)など、呼吸器の病気が増えている。しかし、その療養方法に関しては誤解が少なくない。体を動かすと呼吸が苦しくなるからといって安静にしていると、悪循環に陥って日常生活に支障を来すようになる。生活の質(QOL)を維持・向上させるには、適切なリハビリテーションを行う必要がある。
息切れなど改善
国立国際医療研究センター病院(東京都)リハビリテーション科の藤谷順子医長は、呼吸器疾患の患者に対するリハビリとその目的について、次のように話す。「肺そのものの病変の治療ではありませんが、動いたときに息切れがする、呼吸が苦しくて動けないといった症状を改善するのが目的です」
ポイントは、
- 動き方の工夫
- 酸素の取り込み方の改善
- 心臓や血管、筋肉を鍛える
―の3点。
動き方の工夫では、速く動く、急に力を入れる、無理をするなど息切れを招くような動きはできるだけ避ける。「ゆっくりと歩く、一休みして呼吸を整えてから次の動作に移る、といった工夫をしながら行動範囲を広げていくとよいのです」
逆に、息切れをしてまで頑張ると、心臓に負担が掛かり、かえって体に良くない。
散歩や太極拳も有効
次に酸素の取り込み方の改善では、ゆっくりと両腕を上げるなど胸郭(肺を囲む骨格や筋肉)のストレッチ運動をして呼吸しやすい状態をつくることが第一。それとともにゆっくりと深呼吸する習慣を付ける。「口をすぼめてゆっくりと息を吐き、鼻から空気を吸い込むのが正しい深呼吸です」
心臓や血管、筋肉を鍛えるときにも、やはりゆっくりと動く運動がよい。具体的には散歩、自転車エルゴメーター(固定式自転車)、太極拳などマイルドな運動が適している。
「こうした運動を自分の体力に合わせ、無理せず確実に行うことが大切です。動くと呼吸が苦しくなるからといって安静にしていると、運動能力は低下するばかり。悪循環に陥って運動時の呼吸困難が悪化します」と藤谷医長。
リハビリは家庭でもできるが、適切な指導を希望する人はかかりつけの医師に相談するとよい。
(編集部)
2009年3月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)