「子ども向けワクチン」の枠組み案、基本的に了承
2012年04月03日 13:35
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会(部会長=国立成育医療センター・加藤達夫総長)は3月29日、予防接種法上の疾病区分として、乳幼児期~学童期の子供を接種対象とする7種のワクチン(インフルエンザ菌b型=Hib=感染症、小児肺炎球菌、水痘=水ぼうそう=、おたふくかぜ、ヒトパピローマウイルス=HPV=感染症、B型肝炎)を、1類疾病の要件に含めるための厚生労働省案を基本的に了承した。現行の予防接種法では、定期接種の対象とされる1類疾病では「集団予防」と「致死率の高さ」の2要件が定められているが、これが先進国とのワクチンギャップ解決に当たり高い障壁となっている。厚労省からは、昨年2011年2月に続き、予防接種制度の見直しに関する第二次提言の取りまとめに向けたたたき台も示された。
B型肝炎、HPV感染症も1類疾病に
前回の第20回部会で事務局より示された7疾病の分類案は次の通り。〔 〕内は現行法上の対象疾病。
- 1類疾病の要件(1)「集団予防目的に比重を置いて、直接的な集団予防(流行阻止)を図る目的」に該当するもの〔ジフテリア、百日咳=ぜき=、ポリオ、麻疹=はしか=、風疹=三日ばしか=、結核、痘瘡=天然痘=〕
→Hib、肺炎球菌(小児)、水痘、おたふくかぜ - 1類疾病の要件(2)「致命率が高いことによる重大な社会的損失の防止を図る目的」に該当するもの〔日本脳炎、破傷風〕
→該当する疾病なし - 2類疾病
上記の1、2に該当しない以下の3疾病が該当
→HPV感染症、B型肝炎、肺炎球菌(成人)
小児科医の委員らからは「子供に接種するワクチンでは、任意接種の対象である2類疾病でも健康被害救済のレベルを1類疾病(定期接種)と同等にすべき」との意見が出されていた。
こうした意見を受けて今回、厚労省は「予防接種法上の1類、2類疾病の考え方は行政の関与度。子供のワクチンだからという考えの導入は難しい」との見解を示した。その上で、新たに1類疾病の要件である致命率の定義を「感染後早期の死亡」だけでなく「長期間経過後の死亡」までを含めたものとし、これにHPV感染症とB型肝炎を追加する案を提示した(下線部は今回の案で追加された部分=編集部で追加)。
- 1類疾病の要件(1)「集団予防を図る目的」に該当するもの〔ジフテリア、百日咳、ポリオ、麻しん、風しん、結核、痘そう〕
→Hib感染症、肺炎球菌(小児)、水痘、おたふくかぜ - 1類疾病の要件(2)「致命率が高いこと、または感染し長期間経過後に死に至る可能性が高い疾患になることによる重大な社会的損失の防止を図る目的で予防接種を行う疾病」に該当するもの〔日本脳炎、破傷風〕
→HPV感染症、B型肝炎 - 2類疾病
上記の1、2に該当しない以下の3疾病が該当
→肺炎球菌(成人)
法案提出のタイミングなど見通しは不透明
この案を部会は基本的に了承。一部の委員からは「今後新しいワクチンを含めるかという検討のときに"死に至る可能性"だけだと難しくなるのではないか」「致命率ではなく、長期療養が必要、QOLが低下するなどの重大な社会的損失を入れる方向性での検討が必要」といった意見が出された。
また、事務局は予防接種制度の見直しに関する第二次提言のたたき台を提示。第一次提言は2010年2月19日に取りまとめられている。
昨年9月、第二次提言の原形として厚労省がまとめた検討案では接種費用の負担の在り方について、「定期接種費用の負担は法改正後も引き続き市町村が中心」との文言に、一部の委員から「もっと議論を」との意見が出されていた。今回のたたき台ではこの文言が削除、項目そのものが空欄とされた。今後、あらためて議論が行われる予定だという。現在、政府では「社会保障と税の一体改革」に向けた議論が進んでいるが、今後の財政状況により、予防接種法改正の方向性が左右される可能性も残っているようだ。
2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)流行を機に、新たな感染症への対策強化、ワクチンギャップの解消を掲げ同年12月に設立された予防接種部会も今回で第21回を数える。昨日(3月28日)、新型インフルエンザ対策特別措置法が衆議院を通過した。一方、予防接種法本体の見直しに対する議論は、問題点の洗い出しなどの課題山積とはいえ、最近は部会でもしばしば「もう2年もやっている」「かなりの回数を重ねているので」との言葉が飛び出す。
今回も「いったい第何次提言まであるのか。この部会がそもそも始まったとき、2年でやるということだったが、最終提言を出してそれが法律に反映される見込みはどうなのか」との質問が委員から出された。事務局はこれに対し「わたしどもとしてはこの提言を頂いて、できるだけ早く予防接種法改正の作業をし、国会に提出したいと思っている。第二次提言が最終提言となるのかは、タイミング次第」と応じた。
(編集部)