悪性脳腫瘍、後遺症ないよう手術で大きく取る
2012年04月26日 16:18
頭蓋骨の内部にできる腫瘍を脳腫瘍という。他の臓器でのがんに当たる悪性脳腫瘍の大多数は神経膠腫(こうしゅ)。治療では、後遺症を残さないようにできるだけ大きく取り除く手術を行う。東京女子医科大学脳神経外科の井澤正博准教授に聞いた。
頭痛や吐き気起こる
悪性の神経膠腫は、画像検査では正常な脳組織との境目がはっきり映らないという特徴を持つ。磁気共鳴画像法(MRI)や陽電子放射断層撮影法(PET)などで診断が可能だ。
症状は、他の脳腫瘍と同じような頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などだけでなく、腫瘍ができた部位によって、手足の運動や感覚の麻痺(まひ)、言語障害などが表れる。こうした症状は、徐々に起こり悪化する。
「治療は、後遺症を残さないように、がん部分をできるだけ大きく取り除く手術を行うことが原則。完全に腫瘍を取り除くことはできないので、手術後に放射線療法と化学療法を行います」(井澤准教授)。手術は頭蓋骨を切り開いて、手術用顕微鏡を使って行い、通常で10時間以上かかる。
画像情報基に手術
同大学では手術中にMRI検査(術中MRI)を行い、その画像の位置情報で手術操作を行ったり、手術中に切り取った組織を診断(術中迅速診断)して切除範囲を確かめたりするなどのシステムを構築し、手術の精度を高めている。その結果、かなり高い治療成績が得られているという。
放射線療法は、術後1週か10日ほどたってから、1カ月ほどの間に放射線を20回または30回脳全体に照射する。脱毛、倦怠(けんたい)感、白血球減少などの副作用を伴う。
「化学療法としては、最近は特に神経膠腫に対して効くといわれるテモゾロマイドという抗がん薬がよく使われます」と井澤准教授。
悪性神経膠腫は再発率が非常に高い。再発した場合、再手術を行うこともある。同大学では、1回に高線量の放射線を1点に集中して照射できるガンマナイフ治療を試み、良好な成績が得られた例がある。ガンマナイフの適応は直径3センチ以内の腫瘍に限られるので、再発は早く発見しなければならない。
(編集部)
2009年6月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)