怖い高齢者の転倒―女性は骨折、男性は頭部打撲が多い
2012年05月23日 14:48
高齢者はわずかな段差につまずいて転倒することが多い。「転倒によって女性は骨折、男性は頭部打撲が多いようです。普段から体操で足腰の筋力を強化しておくと転びにくくなります」と、東京都リハビリテーション病院の林泰史院長は助言する。
バランス感覚も低下
「転倒の原因で多いのは、段差、暗さ、まぶしさ、寒さなど、"さ"が付くものです」と林院長。年を重ねると、筋力や反発力、バランス感覚などが低下してくる。すると、自分では歩いていて脚が上がっていると思っているのだが、実際は十分に上がっておらず、わずかな段差やこう配につまずいて転倒してしまう。
別の原因としては、不整脈のほか、白内障、緑内障、糖尿病網膜症などによって視力が落ちて物がよく見えないため転倒することもある。服用している薬の影響で平衡感覚を失い転倒する場合もある。
「女性は骨折することが多い。男性は、頭をぶつけることによる頭部外傷や脳内出血が多いのです」(林院長)
転倒して地面などで頭部を強打した場合、1~2カ月後に頭蓋(ずがい)内出血の症状が表れることがある。頭蓋骨と硬膜の間や、硬膜とくも膜の間などに血の塊である血腫ができて、目まいや吐き気、しびれ、失禁などが起きるのだ。
「本人は原因が分からないので放置することがあるが、命に関わる事態を招く危険性があるので、早く脳外科で治療を受けてください」(林院長)
体操は朝晩10回
林院長が勧める転倒防止の体操は次のようなものだ。
- 立って両手でいすをつかみ、両方のかかとを交互に上げて5秒間停止して下ろす
- 同じ姿勢で膝を軽く曲げて、5秒間停止しゆっくり戻す
- 同じ姿勢で片足の膝は曲げずに後方に一直線に上げ、1秒間停止しゆっくり戻す。続けて別の脚を同じように上げて戻す
「こうした体操は、ふくらはぎ、太もも、尻の筋力を鍛えます。それぞれ朝晩10回ほど毎日行うとよいでしょう。足腰の安定性が良くなって、まっすぐ歩いてもふらつかない上に転倒しにくくなります」と、林院長はアドバイスする。
(編集部)
2009年4月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)