成人の夢遊病、30%が「経験あり」―米研究
2012年05月30日 10:08
夢遊病は子供に多いとされているが、米国の成人の約30%が夢遊病の経験があることが、約2万人の一般人を対象とした米国の研究で示された。この研究結果を5月15日付の米医学誌「Neurology」(電子版)に報告した米スタンフォード大学医学部のMaurice M. Ohayon氏らは、この割合について「これまで考えられていたよりも高い」と評価。さらに夢遊病患者では、睡眠や精神面でさまざまな障害を発症するリスクが高まっていたことも明らかになっている。
大うつ病性障害などのリスク上昇も
夢遊病は医学的に「睡眠時遊行症」と呼ばれており、睡眠障害の中の「睡眠時随伴症」に分類される。睡眠中に突然起き上がり、歩き回ったり、ドアを開けたりといった行動異常が見られ、長い場合には30分以上に及ぶこともあるという。周囲の人が反応を促しても、目覚めることはほとんどない。また翌朝、患者の記憶がないことも特徴で、子供に多い病気といわれている。
Ohayon氏らは、全米15州に住む18歳以上の一般成人1万9,136人を対象に、睡眠中の行動や精神・身体面の健康などに関する聞き取り調査を実施。回答が得られた1万5,929人のうち、29.2%に夢遊病を発症した経験があった。また、3.6%が調査の前年に夢遊病の経験があり、1%に月2回以上の発症経験が、2.6%に前年に1~12回の発症経験があったという。
また、「発症経験あり」と答えた参加者の30.5%で家族歴(家族や近親者に夢遊病患者がいること)が確認され、月2回以上発症している人では睡眠や精神的健康状態に関連する各項目のリスクが上昇していた(表)。
今回の結果から、Ohayon氏らは夢遊病の生涯発症率が29.2%だったことを「高い」と評価。発症経験がある人で抗精神病薬「SSRI」の使用リスクと、大うつ病性障害などのリスク上昇が見られた点について「薬が夢遊病の発症に直接関連するというより、睡眠障害が精神的問題のリスク上昇に関連しているのではないか」と考察している。
(編集部)