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腹部大動脈瘤のステントグラフト療法

 2012年05月31日 12:54

 腹部大動脈瘤(りゅう)の治療に、「ステントグラフト」という人工血管を使った方法が用いられている。戸田中央総合病院(埼玉県)血管内治療センターの石丸新センター長は「他の病気があるなどして、外科手術ができない人に行う治療法です。おなかは切開しないので、入院は1週間以内で済みます」と説明する。

基本は手術で治療

 腹部大動脈は、肝臓のやや下から下腹部に至るまでを指す。動脈瘤はへその辺りで膨らんでできる。

 「腹部大動脈の太さは直径約2センチだが、4センチぐらいに膨らむと動脈瘤と呼ばれます。血管の老齢化が大きな原因で、60歳以上の男性に多く見られます」と石丸センター長。症状はなく、多くが他の病気の検査時や人間ドックなどで発見される。

 膨らみは徐々に大きくなり、5センチを超えると約5%、6センチを超えると約20%が破裂する。破裂すると大出血し、半数は助からないという。

 「5センチを超えると治療した方がよく、一般的にはおなかを開いて動脈瘤を切り取って人工血管を縫い付ける外科手術が行われます」(石丸センター長)

管で動脈瘤に直接アプローチ

 外科手術の成功率は約95%と高い。ただ、脳血管や心臓に病気がある、腹部の手術を受けたことがある、肺が弱く麻酔がかけられないなどの人には、開腹手術は行えない。こうした人に行われるのがステントグラフト療法だ。

 ステントグラフトは、人工血管に金属製のスプリングを付けたもの。それを小さく折り畳んで、カテーテル(細い管)の中に入れる。治療は、脚の付け根を切開して、カテーテルを挿入。動脈瘤に到達したら、ところてん式にステントグラフトを押し出す。スプリングの力で人工血管が開き、こぶの内側に新しい壁を作り、血圧が掛からないようにして破裂を防ぐ。治療は約2時間で済み、1週間以内に退院できる。

 石丸センター長は「この療法は、動脈瘤の形状を判断して適切に行えば成功率は98%以上です。保険も適用されます」と話す。治療は、ステントグラフト実施基準管理委員会の審査に合格した指導医のいる医療機関で受けるとよい。指導医のいる病院は、同委員会の公式サイトに掲載されている。

(編集部)

2008年6月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)

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