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痛み止めが皮膚がんを予防、最大で46%のリスク低下

 2012年06月04日 11:14

 痛み止めや解熱薬として使われるアスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は、発がんへの関与が指摘されているシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の活動を妨害することから、がん予防の可能性を持つ。デンマーク・オーフス大学病院のSigrun A. Johannesdottir氏らは、NSAIDの使用と皮膚がん(有棘=ゆうきょく=細胞がん、基底細胞がん、悪性黒色腫=メラノーマ)との関連を、人口の約30%を対象とした国レベルの研究によって調査。NSAIDを使うことで、特に有棘細胞がんとメラノーマのリスクが最大で46%低下していたことを、5月29日付の米医学誌「Cancer」(電子版)に報告した。長期間の使用や使っている用量が多い人でリスクの低下度合いが大きいため、累積の使用量が増えると予防効果が高まるのではないかと推測している。

頭と首以外の基底細胞がんも

 1991~2009年のデンマークがん登録から、北デンマークにおける皮膚がんの全発症例(有棘細胞がん1,974人、基底細胞がん1万3,316人、メラノーマ3,242人)を特定。1例ごとに出生年、性、地方が一致し、皮膚がんがない約10人(計17万8,655人)を比較対照とした。皮膚がんと診断された年齢(中央値)は有棘細胞がん群77歳、基底細胞がん群67歳、メラノーマ群57歳だった。

 検討の結果、NSAID使用者(3処方以上)を非使用者(2処方以下)と比べた場合の皮膚がんの発生率は、有棘細胞がんで15%減、メラノーマで13%減だった。処方データが10年以上そろった人に限って分析を行ったところ、特に長期の使用(初回の処方から最新の処方まで7年超)で有棘細胞がん、メラノーマともにリスクが16%減、使用量が多い(初回~最新処方期間のうち処方日数が25%超)でそれぞれ34%減、30%減、長期の使用+使用量の多い人でそれぞれ35%減、46%減と最も低下した。

 基底細胞がんでは統計学的に明らかな差はみられなかったが、頭部と頸部(けいぶ=首)以外の部分に限定すると、NSAIDの長期使用でリスクが15%減、使用量が多い人で21%減と、関連が認められた。

新しいCOX2阻害薬ではリスク低下せず

 NSAIDはCOX1とCOX2の両方を阻害する非選択的NSAIDと、COX2だけを阻害する選択的COX-2阻害薬に分けられるが、今回の結果を種類別に見ると、特に非選択的NSAIDと旧来の選択的COX2阻害薬(エトドラク、メロキシカムなど)でリスクが低下したが、セレコキシブなど新規の選択的COX2阻害薬はこれがみられなかった。

 なお、アセトアミノフェンは、頭部と頸部以外の基底細胞がんのリスク低下と関連し、メラノーマのリスクは長期の使用、使用量が多い人で低下していたが、有棘細胞がんのリスクには関連が認められなかった。

 Johannesdottir氏らは、新規のCOX2阻害薬は処方期間が短く、予防効果が現れなかったのかもしれないと推察。皮膚がんのタイプや発症する部位によってリスク低下に差があったことについては、がんのタイプによってCOXの発現が異なるためではないかとしている。

(編集部)

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