男性型脱毛症にぜんそく治療薬が有効?―米研究
2012年06月05日 11:14
プロスタグランジンは体の中で合成される物質で、種類によって血圧低下や発熱、骨新生などさまざまな作用を持つ。米ペンシルベニア大学のLuis A. Garza准教授(現・米ジョンズホプキンス大学皮膚科)らは、このプロスタグランジンが発毛速度の調節も行っていることを明らかにし、米医学誌「Science Translational Medicine」(2012; 4: 126ra34)に発表した。同准教授らは、ぜんそく治療薬として開発中のGPR44阻害薬が、男性型脱毛症(AGA)に有効な可能性があるとしている。
プロスタグランジンD2が発毛を抑制
脱毛や薄毛の原因として最も多いのがAGA。以前から遺伝的要因とホルモンの影響が組み合わさって発症すると推測されていたが、正確な仕組みは分かっていなかった。脱毛症の治療薬は現在、ミノキシジル(商品名リアップなど)とフィナステリド(同プロペシア)の2種類のみが承認されているものの、これらの薬剤の効果には個人差がある。
Garza准教授らは今回、20人を超えるAGA患者の頭皮を分析。同じ患者の頭皮でも毛髪のある部分と比べ、ない部位ではプロスタグランジンD2生成酵素の値が上昇し、プロスタグランジンD2の値も高いことが分かった。プロスタグランジンD2と発毛との関連性については、これまで知られていなかったという。
また同准教授らは、培地に移植したヒト毛包から成長した髪にプロスタグランジンD2を加えることで、発毛が抑制されることを確認した。さらに、マウスの皮膚にプロスタグランジンD2を直接塗ったところ、同じ現象が観察された。
今回の研究では、プロスタグランジンD2がGPR44と呼ばれる受容体にくっつくと毛包の成長を停止させることも確認できた。そのため、同准教授らは「GPR44を阻害することで、AGAの進行を遅らせられる可能性がある」と述べている。
興味深いことに、GPR44阻害薬のいくつかはすでにぜんそく治療薬として臨床試験で検討されており、同准教授らは今回の結果が研究室外でも再現されれば、AGA患者を対象とした臨床試験で、GPR44阻害薬の有効性が評価されることになるとみている。
(編集部)