腕や脚がむくむリンパ浮腫、長時間の立ち仕事など要注意
2012年06月08日 20:00
乳がんや子宮がんなどの手術を受けた後に、腕や脚がむくむことがある。「リンパ浮腫といって、炎症を起こすこともあります。日常生活での予防が大切です」と、東海病院(愛知県)下肢静脈瘤(りゅう)・リンパ浮腫・血管センターの平井正文センター長は呼び掛ける。
リンパ液がたまる
リンパ浮腫は、免疫機能などの働きを持つリンパ液が皮下組織にたまり、主に腕や脚がむくんだ状態。生まれつきリンパ管の発育が悪くて起こる一次性もあるが、ほとんどは乳がんや子宮がんなどの手術後に起こる二次性といわれるものだ。
平井センター長は「がんの手術で、がんの病巣と一緒に周囲のリンパ節を取ってしまうため、リンパ液の流れが悪くなってむくみが起こるのです」と説明する。
乳がんや子宮がんなどの手術を受けた人の15~30%に見られ、約半分は手術後1年以内に起こっているが、10年以上たってからということもある。腕に出るのは圧倒的に乳がんの手術後に多く、脚の方は子宮がんや卵巣がんの手術後に多い。
放っておくとむくみが進行し、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という炎症を起こしたり、皮膚が硬くなったりしやすい。
腕を下げ続けない
このため、乳がんや子宮がんなどの手術を受けた人は、リンパ浮腫の存在を常に念頭に置いておく必要がある。その上で、予防のための日頃の心構えとして、
- 長時間腕を下げたままにしない
- ブレスレットや指輪で局所的な締め付けをしない
- 買い物袋が腕に食い込まないようにする
- 重い物は持たない
- 長時間の立ち仕事は避ける
- 歩き過ぎない
- 正座はしない
―などが大切になる。
一方、治療は、
- 弾性ストッキングや弾性スリーブによる圧迫
- リンパ液が流れやすいようにするリンパ誘導マッサージ
- 炎症を起こさないためのスキンケア
- 運動
―が基本になる。
平井センター長は「がんの手術を受けた後に、どうも腕や脚が腫れぼったいとか重いなどと感じたら、すぐにがんの手術を受けたときの主治医に相談してください」と話す。
(編集部)
2008年8月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)