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受診可能な717施設を網羅、てんかん診療のサイト開設

 2012年07月17日 13:22

 厚生労働省の研究班は7月17日、全国の主なてんかん診療施設のリストなどを掲載したウェブサイト「てんかん診療ネットワーク」(http://www.ecn-japan.com/)を開設した。4つの科にまたがるなど、てんかんの診療は分かりにくいことが多かったが、サイトでは専門的にてんかんの診療を行っている717施設を都道府県別に紹介。どこの医療機関へ行けば治療が受けられるかが簡単に分かるようになっている。研究班の代表を務める大槻泰介氏(国立精神・神経医療研究センター病院てんかんセンター長)は「診療施設のリストを公開することで、発作が抑えられない場合にどの医療機関を受診すればよいのかが分かり、適切な診断と治療が可能になる」としている。

"詳細版"は医療従事者向け

 てんかんは、痙攣(けいれん)や失神などの症状が突然、繰り返し起こる病気。脳に何らかの障害や傷があることが原因とされ、治療は飲み薬のほか外科手術も行われている。わが国の患者数は約100万人と推定されているが、実際に診療を受けている人は推定患者の3分の1以下。また、外科手術の件数も年間500~600件と先進諸国の中で際立って少なく、多くの患者が専門的な治療を受けられていないと推測されている。

 今回、掲載された全国のてんかん診療施設は、1次診療が150施設、2次・3次診療が567施設。2011年12月~12年3月に、全国のてんかん診療医を対象に行ったアンケートで得られた情報を基にしている。

 そのうち、患者や家族の需要が高い専門施設の情報(2次診療以上の施設リスト)は一般公開し、1次診療施設に関しては、ユーザー登録した医師が閲覧できる「詳細版」に掲載している。詳細版には、受け入れ条件や診療レベルなどが示されており、1次診療と2次・3次診療との連携に活用されるという。

 大槻氏は「診療施設のリストを公開することで、発作が抑えられない場合にどの医療機関を受診すればよいのかが分かり、適切な診断と治療が可能になる。これは、患者が適切な医療を受ける権利を保証することにもつながる」と指摘する。

運転免許問題にも一助となるか

 近年、てんかん患者の運転免許取得が注目されているが、規則を厳しくしても、患者はより発作の事実を隠すようになり、結果的に交通事故の増加を招く恐れがある。患者が社会的義務を果たすのは当然のことだが、その一方で、社会では解雇などの不利益を被らない権利や、医療の面でも支持的かつ適切な医療サービスを受ける権利を十分に保証することが不可欠だろう。

 大槻氏によると、てんかん患者が最も求めているのは"発作に困っている自分をサポートし、治療できる医師"だという。また、「発作が抑えられれば再び運転を許可されるかもしれないといった希望が、きちんと治療を受け、ルールを守る動機になる」としている。そのためにも、医療機関側が一定の専門的水準を保ちつつ、地域でてんかん患者に適切な医療を提供するシステムを構築することが課題となる。

 「地域でてんかん患者に適切な医療を提供することは、発作による交通事故を減らし、地域の安全を確保する上で必要な社会的なコスト」とする同氏。「どの医師がどういったてんかん診療を行っているのかが分かりにくい現状は、早急に改善すべき。診療の地域拠点を整備していくことが、さまざまな社会的問題を解決する糸口になるだろう」との考えを示している。

 研究班では今後、てんかんの疫学調査と診療実態の調査、わが国の実態に合わせたてんかん診療システムの提言をまとめ、日本てんかん学会による「てんかん白書」の作成につなげる予定だという。

(編集部)

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