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雑誌・新聞記事に学会反論「科学的成果を無視している」

 2012年07月18日 13:22

 日本高血圧学会は7月12日、公式サイトで、学会による高血圧治療ガイドライン(指針)について「世界的な高血圧治療の指針に従っているだけで、根拠が全くない」などとした最近の雑誌や新聞の記事に対し、「高血圧に関する科学的な研究成果を全く無視したもの」と反論した。同学会の島田和幸理事長(小山市民病院病院長)は、小社の取材に対し「ガイドラインは時間をかけて築いてきた治療概念。報道による日常臨床への混乱はない」と答えた。

国内外の最新エビデンスを反映

 雑誌や新聞などのマスメディアで散見される"誤った認識に基づく記事"の例として、学会が挙げたのは次のようなもの。

  • 高血圧の定義が収縮期(最大)血圧140ミリHg、拡張期(最小)血圧90ミリHg以上という基準は低過ぎる
  • 高血圧の定義は、昔はもっと高かった
  • 基準を下げると、それだけ高血圧患者が増えて製薬会社がもうかる仕組みになっている
  • 疫学研究の成績では、むしろ血圧の低い方が悪いというものもある
  • 学会が作成した高血圧治療ガイドラインは、世界的な高血圧治療の指針に従っているだけで全く根拠がない

 現在の高血圧の基準や治療について疑問や意義を唱える論調のこれら一連の報道に対し、学会は「事実は正反対である」として全面否定した。

 学会では2000年にガイドラインを作成以来、時代遅れの治療にならないよう国内外の新たなエビデンス(科が的根拠となる研究結果)を反映させるため、2004、2009年と改訂を重ねてきた。

 ガイドラインにある血圧の基準値や治療法は、高血圧の専門家だけでなく関連学会の専門家や臨床医の意見も反映するなど、いわば"オールジャパン"で作り上げたもの。一方で、ガイドラインでは、高血圧は年齢や合併症の有無などによって異なるため、それぞれ医師の判断に基づいた最適な治療法の選らぶよう推奨している。つまり、ガイドラインは治療の範囲を制限するものではないという。

 こうしたことから、学会は一連の報道に対し「過去の膨大な国内外の高血圧に関する科学的な研究成果を全く無視したもの」として、全面否定した。

 島田理事長は、小社の取材に対し次のように述べている。

 「いつの時代でも、治療指針に対する疑問や意義を唱える報道はあり、個々の報道に対しどうこうするものではない。しかし、高血圧治療ガイドラインは、これまで長い時間をかけて築いてきた治療概念で、あらゆる尺度で検討するため、高血圧の専門医だけでなく、関連学会の専門医や臨床医の意見も取り入れてきことは指摘しておきたい。高血圧診療では、医師と患者の双方向で治療に取り組んできた。患者にも治療の基本方針に対する理解を呼び掛けてほしい」

(編集部)

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