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世界のB型肝炎ウイルスの感染者数は何人?

 2012年07月27日 14:45

 7月28日は世界肝炎デー(World Hepatitis Day)。2010年に世界保健機関(WHO)総会で制定された。当日は、日本を含む世界各地で疾患啓発イベントが開催される。今年のスローガンは「It's closer than you think(思っているより身近で切迫した健康リスク)」。WHOは、世界で年間140万人がA型肝炎にかかっており、C型肝炎ウイルス(HCV)の慢性感染例は世界で1,500万人に上っているほか、B型肝炎ウイルス(HBV)感染者の数は世界で20億人に達するとの試算を示している。

有病率高く重篤な感染症だが認知度低い

 世界肝炎デー制定の背景について、WHOは「世界で最も有病率が高く重篤な感染症の1つであるにもかかわらず、政府を含む多くの人々の認知度が低い」と説明。現在、世界では年間100万人がウイルス性肝炎により死亡しており、HBVとHCVが肝炎の原因の78%を占めることが分かっている。

 WHOは、世界肝炎デーが「ウイルス性肝炎と合併症の予防、検査、治療の強化」「B型肝炎ワクチンの接種率上昇と予防接種制度への導入強化」などのきっかけとなるだろうとの声明を発表している。WHOは以前からB型肝炎ワクチンの定期接種化を勧告しており、2010年には193カ国中179カ国が定期接種を実施した。

急性肝炎届け出の実態把握は「困難な状態」

 日本はB型肝炎の予防対策について、WHOが推進する上記の項目をどれほど満たしているのか。HBVへの慢性感染のリスクが高い子供への予防接種について、日本ではHBV感染者の母親とその子供への選択的接種が実施されてきた。しかし、この接種法では感受性者の感染リスクは減少できないことが指摘されている。また、選択的接種を実施している国は世界で数えるほどしかない。

 これまで医学団体や医療関係者らが海外の多くの国々と同様、全ての子供を対象としたB型肝炎ワクチンの定期接種を要望してきた。さらに、日本小児科学会は昨年、HBV感染者となった子供の約30%が不完全な選択的接種が原因で感染しており、制度的問題が存在するとして、米国などで行われている出生直後からのB型肝炎ワクチン接種を母子感染事業に導入する要望書を厚生労働省に提出している。

 また、国立感染症研究所は日本の母子感染事業が保険診療としてさまざまな医療機関で行われているため、実態把握が困難になっていること、全数把握疾患であるウイルス性肝炎の届け出が少なく、実態を正しく反映できていない問題点を指摘。その上で「日本では急性B型肝炎の把握が十分に行われておらず、ワクチン政策導入後の効果判定が難しいと予想される」と、世界標準の肝炎予防対策との隔たりを感じさせる結論を示している。

 一方、厚労省は2010年に「肝炎対策基本法」を制定し、肝炎研究10カ年戦略の見直しを行うなど、肝炎の治療成績向上に資する研究を推進。今後も診療体制の充実や新規治療薬開発に関連した研究など、B型肝炎やC型肝炎を中心とした肝炎総合対策()を進めたいとしている。

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「三猿プロジェクト」でギネスに挑戦

 日本の世界肝炎デーへの参加は今回が初。世界肝炎連盟が行う啓発イベント「三猿プロジェクト」(見ざる、聞かざる、言わざる=see no evil, hear no evil, speak no evil)のアクションを大勢で同時に行い、ギネス記録を申請するイベントなども行われる。世界肝炎連盟は今回のテーマ選定の理由を「さまざまな意味があるが、通常、問題を認識することを拒む人々のことを指す言葉」と説明。この言葉を通して、世界の肝炎への無関心を浮き彫りにしたいとしている。

 国内での啓発イベントやキャンペーンは東京・神奈川・千葉・埼玉で行われるJリーグの試合会場のほか、山形、秋田、広島、佐賀などでも行われる。詳細は日本肝炎デー公式サイトで見ることができる。神奈川県の日産スタジアムには、小宮山洋子厚労大臣や世界肝炎連盟のチャールズ・ゴア会長、タレントらが参加する予定。また、一般の人に肝炎ウイルス検査を呼び掛ける広報も自治体単位で行われている。

(編集部)

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