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福島第一原発事故後の作業員の苦悩を検証 防衛医大

 2012年08月20日 15:23

 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故後、原発施設で処理に当たった作業員の精神的苦痛はどれほどだったのか。防衛医科大学校(埼玉県)精神科学の重村淳氏らは、事故の2~3カ月後(2011年5~6月)に福島第一原発と第二原発での作業にフルタイムで従事していた約1,500人の精神状態について検討。「一般的な精神的苦痛が全体の4割強、心的外傷後ストレス反応(PTSR)が4人に1人の割合で見られ、差別・中傷が災害後のメンタルヘルスを考える上で重要な要因の一つであることが示された」と、8月15日発行の米医学誌「JAMA」(2012; 308: 667-669)で報告した。なお、同誌には福島県・南相馬市住民の被ばく線量の計測結果も同時掲載されている(関連記事)。

作業員の複雑な経験が結果に反映

 重村氏らは、福島原発の作業員1,760人を対象にアンケートを実施。差別や中傷を含む震災関連の経験や精神状態などについて聞き、そこから一般的な精神的苦痛、PTSRなどの度合いを評価した。

 1,495人(第一原発885人、第二原発610人)から寄せられた回答を検討した結果、第一原発作業員の方が、第二原発作業員より災害に関連したストレスにさらされる頻度は高かったが、差別や中傷を受けた割合に差はないことが分かった。

 一般的な精神的苦痛と評価された人の割合は第一原発作業員で高く(第一原発作業員46.6%、第二原発作業員37.0%)、高度のPTSRが認められる割合も第一原発作業員で高かった(同29.5%、19.2%)。

 差別や中傷を受けた人は一般的な精神的苦痛と評価されることが多く、第一原発作業員で2.06倍、第二原発作業員で2.90倍。高度のPTSRでは第一原発作業員で2.17倍、 第二原発作業員で2.70倍だった。これまで差別や中傷は災害後メンタルヘルスの要因として取り上げられてこなかったが、一般的な精神的苦痛や高度のPTSRの双方と関連していることが示された。

 重村氏は「今回の調査で示された一般的な精神的苦痛と高度のPTSRの頻度の高さは、作業員自身の経験の複雑さを反映していると推測される。第一原発作業員の方が災害関連ストレス要因にさらされること多かった点が、今回の結果につながったようだ」と結論している。

(編集部)

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