40~60代に多い卵巣がん、親族に患者いる人は検診を
2012年09月12日 16:14
卵巣がんが増加しているが、初期には症状がほとんどなく、たまたま発見されるケースが多い。がん研有明病院(東京都)婦人科の宇津木久仁子医長は「特に、親族に卵巣がんや乳がんにかかった人がいる場合は検診を受けて」と呼び掛ける。40~60歳代で多く発症するが、全体の1割を占める胚細胞腫瘍という種類では、20歳代以下で多くみられるという。
初期症状はない
卵巣がんは主に、排卵の際に卵巣の表面に傷が付き、その修復過程で発生する。卵巣がんになりやすい特定の遺伝子を持っている人や、子宮内膜症にかかっている人がなりやすいという。動物性脂肪の取り過ぎも要因とみられる。増加の理由として、出産数の減少や食生活の欧米化が指摘されている。
卵巣がんは、初期にはほとんど症状がない。不正出血も起きない。進行すると腹水がたまり、おなかがぱんぱんになったり、おなかをさするとがんのしこりに触れたりすることもある。スカートのウエストがきつくなるので、中年太りと間違えることもある。良性の腫瘍でもおなかが膨れることもあるが、がんではそのスピードが速い。
診断は、経膣(ちつ)の内視鏡による超音波検査によって行われる。
下腹部をなでてみる
卵巣がんは、種類によって発症年齢や抗がん薬の治療効果が異なる。卵巣の表面に発生する表層上皮性腫瘍は全体の約9割を占め、40~60歳代に多く発症する。約1割は卵子の元になる胚(はい)細胞に発生する胚細胞腫瘍で、これは20歳代以下に多い。
治療は早期なら手術を中心に行うが、進行したものは手術と抗がん薬を組み合わせる。抗がん薬は特に表層上皮性腫瘍に効果があるという。
宇津木医長は「親族に卵巣がんや乳がん患者がいる人はリスクが高いので、年に1回は婦人科や人間ドックでの検診を」と勧める。
また「時々、あおむけに寝て膝を曲げた状態で、体の力を抜いて下腹部を手のひらでなでてみるとよいでしょう。太っていると分かりにくいかもしれませんが、何か触れるものがあったら卵巣がんも疑われます。婦人科を受診してください」と助言している。
(編集部)
2010年6月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)