予防接種間隔の変更・任意接種ワクチンの定期化で要望書
2012年09月24日 09:52
日本小児科学会(会長=五十嵐隆氏)は9月21日、異なるワクチン同士の接種間隔に関する予防接種実施要領の変更を求める要望書を小宮山洋子厚生労働大臣宛てに提出したことを明らかにした。水痘ワクチン、ムンプスワクチン、B型肝炎ワクチンの早期定期接種化に関する要望書も同時に提出された。
接種間隔の制限をなくす
この数年、日本でも乳幼児期に受けられる予防接種の種類が増加、特に生後2カ月から1歳頃までの接種スケジュールの過密化が指摘されている。日本小児科学会は昨年、ごく一部の例外を除き、異なる種類のワクチンを一度に接種する同時接種について有効性や安全性に問題はなく、予防接種率の向上や小児のワクチンで防げる疾患(VPD)予防の観点から必要との見解を示している。
今回、日本小児科学会は、
- 注射生ワクチンを接種した日から次の注射生ワクチン接種までの間隔は、理論的に起こり得る免疫干渉の可能性を考慮して27日以上置く、次の不活化ワクチンや経口生ワクチン接種を行うまでの間隔は制限しない
- 不活化ワクチンを接種した日から、次の全てのワクチン接種を行うまでの間隔は制限しない
- ロタウイルスワクチンなど経口生ワクチンを接種した日から次のワクチン接種を行うまでの間隔は制限しない
―を予防接種実施要領に反映するよう要望。
同学会によると、以前は不活化ワクチンの接種間隔に関する法令上の規定がなく、副反応の観察期間として生ワクチンから次の不活化ワクチン接種まで4週間、不活化ワクチン同士の場合は1~2週間の間隔を空けることが「慣習」となっていたという。
その後、予防接種実施要領にこの「慣習」が盛り込まれた経緯があったが、同学会は「生ワクチンと、不活化ワクチンなどその他のワクチン同士の組み合わせに関しては、接種間隔を置くべき特段の科学的理由はない」と説明。海外先進国同様、注射生ワクチンを除く、異なるワクチンの接種間隔に制限を設けない改訂を行うよう求めている。
混合ワクチンの早期導入も要望
また、今年5月23日に予防接種部会が発表した予防接種制度の見直し(第二次提言)を受けて、水痘(水ぼうそう)ワクチン、ムンプス(おたふくかぜ)ワクチン、B型肝炎ワクチンの速やかな定期接種化を求める3通の要望書も厚労大臣宛てに提出された。
要望書の中で日本小児科学会は、水痘やムンプスは子供の軽い病気と思われがちだが、重篤な合併症を併発するリスクがあること、子供だけでなく免疫のない大人を守るためにもこれらのワクチンの一刻も早い導入が必要と強調。また、B型肝炎ワクチンの要望書では同ワクチンの早急な定期接種化とともに、乳児期の接種回数や費用負担を軽減するための混合ワクチンの早期導入を求めている。
これまでにも、予防接種推進専門協議会などが任意接種に位置付けられている全ての小児向けワクチンの定期接種化を要望する声明を発表してきた。しかし、先日の予防接種部会における第二次提言取りまとめでは、現在、単年度ごとに公費助成が行われている3つのワクチン(ヒトパピローマウイルス=HPV、ヒブ、小児用肺炎球菌)を除く残りの4ワクチン(水痘、ムンプス、B型肝炎、成人用肺炎球菌)の財源確保に向けた努力が今後行われるのか、懸念の声も相次いだ。
(編集部)