注目される音楽運動療法、意識障害の改善に期待
2012年10月03日 16:03
トランポリン器具を使った運動と音楽を併用した音楽運動療法が、交通事故などで意識障害を起こした患者の療法として注目されている。同療法を石切生喜病院、北野病院(いずれも大阪府)の協力で実施している大阪芸術大学初等芸術教育学科の野田燎教授(音楽脳神経学)は「音楽運動療法は運動、言語、精神をつかさどる脳の働きを活性化させます」と話している。
生演奏が鍵
音楽運動療法は、トランポリン器具に患者を座るか立たせた状態で、その姿勢のままで上下運動を行い、同時に歌やピアノなどの生演奏を流す。
従来の音楽療法では主に音楽を聴いてもらい、聴覚から脳の刺激を試みたが、音楽運動療法は聴覚に加え、体幹への上下運動刺激で神経にも同時刺激を与える。神経伝達物質のドパミンやアドレナリン、ノルアドレナリンの分泌を促し、大脳の損傷部分の神経再生と修復を図る。髄液中の神経伝達物質の数値が、音楽運動療法を繰り返すことで上昇することが確認されたという。
「音楽は生演奏が鍵です。個々の患者さんの動きに合わせてリズムやアクセントを変えながら演奏できるからです。使う楽器はピアノやサックス、打楽器など。歌もあります。選曲は患者さんの好みを考慮します」(野田教授)
早期で高い効果
野田教授らの調べでは、音楽運動療法を意識障害発症から6カ月以内に始めた29人では18人(62%)、6カ月以降に始めた39人では8人(21%)に一定の改善があった。
「発症から2カ月以内の療法開始では、さらに高い効果が得られています。できるだけ早い時期に行うことが重要ですが、課題は実施している医療機関や施設が少ないこと。この療法が広まることを期待しています」と野田教授は話す。
(編集部)
2010年10月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)