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その発作、ひょっとしたら...小児てんかんに気づいて

 2012年10月18日 17:25

 日本のてんかん患者は約100万人と推定され、人口の約0.5~1.0%を占める。ありふれた脳の病気だが、多くの患者が適切な治療を受けられていない可能性が高い。患者の多くが子供の頃に発症しており、発作の発見が遅れればそれだけ成長期の大切な時間が失われる恐れがある。全身が硬直したり気を失って倒れたりする発作ばかりではなく、家族はどのように注意して対処すればよいのだろうか。北海道大学病院小児科の白石秀明医師に聞いた。

発作の種類はさまざま

 てんかんは年齢や性別、人種などに関係なく発症する。原因不明の特発性てんかんと、頭のけがや脳腫瘍など脳で起きた病変が引き金になる症候性てんかんに分けられる。白石氏は「さまざまな発作があり、専門医でも診断に時間がかかることは珍しくないので、発作に接する機会が多い家族からの情報が重要な手掛かりになります」と説明する。

 子供が意識を失って全身が硬直し、手足が痙攣(けいれん=強直間代発作)すると家族は慌てるかもしれないが、落ち着いて観察することが大切だ。

 発作の種類もさまざまで、一点を見つめたまま無反応になる欠神発作や、意識が遠のいた状態で口をもぐもぐさせたり、喉をごくごく鳴らしたりする複雑部分発作などがある。意識が保たれたままの単純部分発作では、体の一部にチクチクと痛みを感じる、不快な臭いがする、吐き気がするといった症状もある。このように、てんかん発作は必ずしも分かりやすいものばかりではない。

発見遅れ不登校になったケースも

 小さい頃から吐き気と意識を失う発作が続いていたにもかかわらず、患者本人も家族もてんかん発作と気付かなかったため大人になって初めててんかんと分かった患者もいる。また、毎朝目覚めるときに意識を失う発作を繰り返すせいで不登校になった子供が、家族に原因を「心の問題」と決めつけられて責められ続けたケースもある。いずれも専門医の診断が遅れ、成長の大事な時間の大半をてんかんに奪われてしまった事例だ。

 白石氏は「小児てんかんは適切な治療を行えば約8割は完治できます。しかし、多感な成長期にてんかん発作を見落として治療が遅れると、将来の社会生活に大きく影響することがあるのです」と話し、子供のちょっとした変化でも医師に相談するよう求めている。

 てんかんには外科手術で治す方法もあれば、体内に埋めた電流装置で発作を抑える方法もあるが、基本は薬物治療である。2000年代に入ってからは新しい治療薬(抗てんかん薬)が相次いで開発されている。また、一部のてんかんにはケトン食療法(炭水化物を減らし脂肪を増やした食事による治療法)、乳幼児に生じる点頭てんかんには副腎皮質刺激ホルモンを筋肉注射する治療法もある。

てんかん関連死で少なくない溺死

 薬物治療で重要なのは、服用ルールをしっかり守ることだ。「1回ぐらいはいいだろう」とサボった時に限って、車道を横断していたり、入浴していたりする間に発作が起きる可能性もある。実際に、てんかんが関連した死亡原因で多いのは溺死など不慮の事故だという。

 国民の100人に1人は患者というてんかんだが、国内の専門医は400人ほどで患者4,000~5,000人あたり1~2人しかいないとされる。しかも、その専門医でも診断が難しい病気なのである。このため白石氏は「日常生活の中で子供にてんかんの発作らしき異常を少しでも感じたら、ためらわずに主治医に相談し、疑いがあれば専門医の治療を受けてほしい」と訴える。日本てんかん学会の公式ページでは、てんかん専門医の名前や所属する医療機関を探せるのでチェックしておきたい。

(編集部)

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