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ノロウイルスにかかったら...英国では「受診しないで!」

 2012年12月11日 10:51

 日本だけでなく、英国や米国でもノロウイルスの流行期を迎え、各国の当局が一般市民や医療関係者に情報を発信している。ノロウイルスに利用可能なワクチンは現在なく、対策の中心は手洗いや消毒なのは共通しているが、細かいところにはそれぞれ違いがある。中でも「(ノロウイルスによる)感染性胃腸炎にかかったら?」という疑問への答えがそれぞれ異なっており興味深い。日本では受診を勧めているが、英国では「治療しなくても自然に治る」として受診をしないようアドバイスしている。

最新の感染性胃腸炎発生報告数と年間推移を見る

情報量と詳しさは厚労省がトップ

 一般市民向けの情報に絞ると、情報量では日本の厚生労働省がトップ。A4判11ページ程度、23項目のQ&Aが提供されている。英国の保健保護局(HPA)は日本と同じくQ&Aによる情報提供を行っているが、11項目と約半分でA4判2ページ程度。米国の疾病対策センター(CDC)もQ&A方式ではないものの、英国版と同じ程度の情報量だ。

 内容についても日本版では、ノロウイルスが発見された経緯や名前の由来から過去10年の発生状況、手洗いの他、調理台や調理器具の殺菌、患者のふん便や吐物処理の仕方までがかなり丁寧に説明。徹底的にウイルスと闘う(?)姿勢がうかがえる。普段読めば、一般の人もかなり学べそうな内容だが、実際にこれを読む機会が本人、家族が感染した可能性がある時と仮定した場合、これを読破し、実行するにはかなり気合いがいるかもしれない。

汚染衣類の洗浄:日「ガウン・マスク・手袋」、米「手袋のみ」、英「記載なし」

 米国版は手指の十分な洗浄を前面に出しつつ、野菜や果物、魚介類はよく洗ってから調理すること、ウイルスによる汚染部分の消毒の仕方などが手短に書かれている。汚染されたおむつや衣類を扱う場合の注意事項について、日本版は「使い捨てのガウンやマスク、手袋着用」でおむつなどを処分することのほか、衣類などは「しぶきを吸い込まないよう注意して、付着したウイルスが飛び散らないよう処理しつつ洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗い」することを推奨している。

 米国版では「汚染された衣類はすぐに捨てるか洗う」とあるほか、「衣服を激しく動かさずに扱い、洗う際には使い捨てあるいはゴムの手袋を使用」など、かなり簡単だ。日本版に比べ、より多くの人が実施できそうではある。

 一方、英国版では「ノロウイルスは容易に人から人へ感染するためコントロールは難しい」とばっさり。最も効果的な方法として、手指の衛生に気を付けることや汚染された区域はすぐに消毒する、感染者は症状発現後48時間以内に調理を行わないことなどを挙げているのみで、衣類の洗浄に関する項目は皆無。全体的にシンプルな構成が貫かれている。

米「重篤な脱水症状があれば受診を」

 ノロウイルスに感染した場合の対応について、日本版では「最寄りの保健所やかかりつけ医に相談」を推奨。さらに、保育所や学校などでは早く診断を確定し、感染拡大を防ぐことが重要であり、速やかに保健所に相談することなどが求められている。米国版では「ノロウイルス感染症が抗菌薬では治療できないこと」「下痢による脱水予防のため水分を十分取ること」とされており、重篤な脱水症状がある場合には受診するようにと説明されている。

 日本版や米国版とかなり異なるのが英国版だ。「特異的な治療はなく、十分な水分を取ること」とされているほか、別項で「ノロウイルスはどのくらい一般的な感染症か」との質問にも、「ほとんどの人は感染しても受診しないので正確な数の把握は難しい」とあっさり回答。今シーズンの国内での流行を受けて、HPAが12月4日に出したプレスリリースでは「ノロウイルス感染症は、治療しなくても自然に治る。かかりつけ医や救急外来は受診しないで」とのアドバイスが行われている。

 さらに「常に手指の衛生を心掛けること、トイレの後、食事前は特によく手を洗う」「他の人に感染させるリスクがある場合、感染拡大のリスクが高い病院や介護施設にいる友人や親戚を訪ねてはいけない」と基本的に自宅療養を推奨。医療機関を探す場合にはNHS(英国の国民保健サービス)の公式サイトを利用するよう求めている。症状が強く出て心細いときには突き放されたように感じてしまいそうな内容だが、「家でじっと寝て治るのを待とう」という説得力はありそう。なお、英国では2009年、ノロウイルスの集団発生が起き、NHS関連施設のほとんどが病棟閉鎖に追い込まれている。

 どのアドバイスが有用か、実現性があるかといった判断は、状況や立場によって異なると思われる。しかし、それぞれの国の感染症に対する考え方や、医療事情、国民性などが反映されており、読み比べてみるのも面白いかもしれない。

(編集部)

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