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第6回 世界23ヵ国で展開するHIV/エイズ治療プログラム

 2012年12月13日 12:30

 国境なき医師団(MSF)は、1990年代に世界各地の活動地で、HIV/エイズに感染した人々の治療を開始しました。2000年にはカメルーン、タイ、南アフリカ共和国で、効果の高い抗レトロウイルス薬治療の提供を始めました。

最新のエイズ(HIV感染)発生報告数と年間推移を見る

「エイズって何ですか?」

 現在、HIV/エイズ治療プログラムは23カ国で展開しており、22万人以上の患者に治療を提供しています。

 アフリカ南部にあるスワジランドのゼンビ・ンカンファララさんは、MSFの"エキスパート患者"として活動しています。エキスパート患者とは、慢性疾患の治療歴が長い患者が、その経験と知識を基に同じ病気を抱えている人を支える存在です。検査や治療・予防の啓蒙活動や、カウンセリングなどを行います。

 ゼンビさんがHIV陽性の検査結果を受け取ったのは2001年、25歳のときでした。体重が大幅に減り、吐き気を感じる日々。寒冷じんましんと温暖じんましんの両方の症状が出ており、うわ言を言うこともありました。全身がただれ、車椅子から立ち上がれない状態でした。

 家族に連れられてスワジランド最大級の都市マンジニの病院に行ったところ、肺炎と診断されました。肺にたまっていた水は4リットル。その際、医師からHIV検査の希望を尋ねられたのです。ゼンビさんは「それは何ですか? と答えてしまいました」と話します。当時、エイズの存在すら知らなかったそうです。

経験を伝え、患者を支える"エキスパート患者"に

 ゼンビさんの検査結果は陽性。免疫力の程度によってHIV/エイズの病状の指標となる数値「CD4リンパ球数」がとても低く、すでに第3段階になっていました。免疫力がかなり低下していて、生きていることが奇跡的だったのです。ただ、幸いなことに治療できる可能性は残っていました。2002年1月26日に、抗レトロウイルス薬治療を開始しました。

 ゼンビさんは急速に回復し、2週間後には車椅子を離れ、つえだけで歩けるようになりました。一方、社会の偏見は強く、家族にさえ「ゼンビの使った皿は使いたくない」とまで言われたそうです。

 ゼンビさんは、HIV/エイズや、その治療の可能性が理解されていないことを「非常に腹立たしく思いました」と話します。そこで「検査と治療で私の命は救われたのだと世界に伝えよう」と決意し、MSFのエキスパート患者になる道を選んだのです。

MSF、新しい治療・検査法を導入

 抗レトロウイルス薬治療の登場で、HIV/エイズは慢性疾患と見なせるようになりました。また、最新の研究で、治療で患者の健康を保つだけでなく、他人へのウイルス感染を予防できることも分かってきました。病気の初期段階で抗レトロウイルス薬治療を行い、HIVを「検出不可」に抑え込むなど新しい治療法も登場しています。MSFは複数の活動プログラムで、こうした新治療法も一部導入しています。

 例えば、MSFはスワジランドで、「検査と治療(Test and Treat=T&T)」や「予防のための治療(Treatment as Prevention=TasP)」といった対策モデルの実践と普及について調査・研究しています。CD4リンパ球数にかかわらず、全てのHIV陽性患者へ治療を提供することも目指しています。このモデルは、HIV感染の抑止に最大限の効果をもたらします。

 また、ウイルス量測定を簡単に素早く行える方法も模索しています。従来は、CDリンパ球数から治療効果を読み取っています。この方法は時間がかかり、治療を軌道に乗せるまでに数カ月~数年かかることもあります。

 一方、ウイルス量測定の場合、結果を素早く知ることができます。病状の変化を早期発見したり、患者が薬をきちんと飲んでいるかどうかを確認したりできるのです。また、母子感染の有無を短時間で確認し、感染していた場合には、将来の問題を予測して治療計画を立てることができます。
さらに、患者を中心に据えたHIV/エイズの治療モデルも実践しています。アフリカ南部にあるモザンビークのテテ州では、近隣住民が6人ずつのグループに分かれ、治療薬の詰め替え用容器を交代で回収しています。コンゴ民主共和国では、患者たち自身で、地域での治療薬の配布を管理しています。

「すべての患者に抗レトロウイルス薬治療を」

 MSFが国連エイズ合同計画(UNAIDS)と協力して実施し、2012年7月に発表した調査では、抗レトロウイルス薬治療を受けている患者の割合は、調査した23カ国中6カ国で30%程度にとどまっていました。母子感染予防の普及率は、5カ国が30%にも満たない結果でした。

 MSFがモザンビークで行っているHIV/エイズ治療プログラムのトム・デクロー医師は「HIV感染を抑止するためには、すべての患者に抗レトロウイルス薬治療を提供する必要があります」と指摘しています。

 HIV/エイズの治療を受けている女性たちが、命をつなぐARV治療の大切さを世界中の人に伝えるためのファッションショーを開きました。「薬が足りないと聞いて」、「若い人たちに知ってもらうために」、「私にできることなら」と参加者はそれぞれの思いを語ります。病気を世間に知られる不安を乗り越え、勇気を出してライトを浴びた彼女たちのメッセージを受け止めて下さい。

【あなたの寄付金でできること】

  • 3,000円で、基礎医療セット120人×1カ月分を用意できます。
  • 5,000円で、けがをした子供の感染症を防ぐ抗生物質20人分を用意できます。
  • 1万円で、外傷者の治療に使う包帯・消毒・テープを50セット用意できます。
  • 3万円で、重傷者用の緊急外科手術セットを1セット用意できます。
  • 5万円で、手術用麻酔17回分を用意できます。

【毎月の寄付】

1日当たり50円、または任意の金額を寄付できる方法です。安定した活動資金の確保につながり、緊急事態への迅速な対応や、より長期的な視野に立ったプログラムづくりを可能にする支援方法です。ぜひご協力ください。お申し込みはこちら

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