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心肺蘇生、心臓マッサージだけの方が脳機能の回復良好

 2012年12月17日 13:22

 道端に倒れている人がいたらどうするか。呼び掛けに反応がなく、正常な呼吸をしていない場合は、心臓が停止している可能性がある。ただちに心肺蘇生が必要だが、心肺蘇生といえば人工呼吸と心臓マッサージ(胸骨圧迫)の組み合わせを思い浮かべる人が多いだろう。ところが、人工呼吸を併用するよりも、心臓マッサージだけの方が脳機能の回復が良好だったとする解析結果が、京都大学保健管理センターの石見拓氏によって米医学誌「Circulation」(2012; 126: 2844-2851)に報告された。この解析には、総務省消防庁が集めている世界最大規模のデータベースを使っている。

09年までの5年間で心マのみが増加

 通行人による(バイスタンダー)心肺蘇生の手順はこれまで、

  1. 呼び掛けて反応を確認
  2. 周囲に119番通報とAED(体外式除細動器)手配を依頼
  3. 呼吸を確認
  4. 胸の真ん中を強く(5センチ沈むまで)1分間に100回のテンポで圧迫(心臓マッサージ)
  5. 気道を確保し、倒れている人の鼻をつまんで人工呼吸2回
  6. 4と5を繰り返す

―が基本とされてきた。

 しかし、人工呼吸は正しいやり方を習得するのが難しく、抵抗のある人も多いため、近年は呼吸の確認後、心臓マッサージを優先することが推奨されている。日本救急医学会も「人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)の組み合わせが原則」としつつ、胸骨圧迫が最も重要で「胸骨圧迫だけでも実施することが強く勧められます」と説明している。

 石見氏らは、心臓の障害を原因とする病院以外での心停止例の蘇生について、総務省消防庁が集めている解析データ(54万7,153件、2005年1月~09年12月に登録)から、心臓マッサージのみの506件(平均61.3歳、男性85.0%)と人工呼吸併用の870件(同61.3歳、75.7%)を抽出。1カ月間生存した例の脳機能の回復を検討した。

 いずれも、救急隊員が到着する前に通行人によるAEDが実施されており、倒れてから通行人によるAEDまたは心肺蘇生が実施されるまでの平均時間は、心臓マッサージのみが2.9分、人工呼吸併用が2.6分だった。

 なお、心臓マッサージのみは2005年に5.1%だったのが、2009年には44.4%と急増している。一方、人工呼吸併用は減少傾向にあった。

自己心拍再開も1カ月生存も心マのみで良好

 自分の拍動が再開したのは、心臓マッサージのみでは50.2%、人工呼吸併用では40.5%、1カ月後の生存ではそれぞれ46.4%、39.9%で、いずれも心臓マッサージのみの方で良好だった。

 また、1カ月生存例の脳機能の回復が良好だった割合を評価したところ、人工呼吸併用で32.9%だったのに対し、心臓マッサージのみでは40.7%、さまざまな要因による影響を除外すると、脳機能の回復が良好な割合は心臓マッサージのみで1.33倍多かった。また、より早期のAED施行が、良好な脳機能回復に寄与していたという。

 心臓マッサージのみで良好な脳機能回復の割合が40%以上という結果は、これまで報告された中でも高く、今後はこの割合を目標にすべきと石見氏ら。また、心臓マッサージのみの心肺蘇生とAEDの教育プログラムを奨励していく必要があるとしている。

(編集部)

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