高齢者のてんかん、物忘れなど記憶障害起こす
2013年02月26日 12:01
子供の病気と思われることが多いてんかんは、実際には高齢者の方が多い。高齢者では、物忘れなど記憶障害を起こす「側頭葉てんかん」が7割を超えるという。そのため認知症と間違えやすいが、治療可能な病気なので見極めが大切だ。国立精神・神経医療研究センター病院(東京都)精神科の渡辺雅子医長に聞いた。
初期には意識喪失も
脳は活動時に微量の電流を流しており、それが過剰に放電されて発作を起こす病気がてんかん。高齢者のてんかんについて、渡辺医長は次のように話す。
「子供は、大脳皮質(大脳の表面に広がる層)全体に異常な放電が起こる全般発作と、局所的に起こる部分発作がありますが、高齢者では基本的に部分発作が多いとされています。それも、側頭葉に起こるケースが圧倒的に多いのです」
これを側頭葉てんかんという。側頭葉は記憶をつかさどる部位で、初期には意識がなくなる、気持ちが悪くなるといった症状で始まり、発作が治まった後もしばらく記憶障害が残ることがある。また、場合によっては記憶障害が前面に出る人もいるようだ。
薬で8割は改善
こうした症状と、高齢であることからアルツハイマー病などの認知症と間違われるケースがある。しかし、認知症の治療を受けても改善しないばかりか、むしろ発見が遅れて悪化する危険性があるという。
「早期に発見するには、てんかんは子供特有の病気ではなく、高齢者にも多いことを認識するのが第一です。そして、家族や周囲の人が疑わしい症状に気付いたときは、精神科や神経内科、脳神経外科のいずれかで、日本てんかん学会の会員のいる医療施設を受診するとよいでしょう」(渡辺医長)
診断では脳波検査が行われる。一晩中行う本格的な睡眠脳波検査でなく昼間のうたた寝程度の短い睡眠脳波検査でも、覚醒中の脳波検査だけよりは診断の精度は高い。治療は、抗てんかん薬によって患者の8割は改善しているという。
(編集部)
2012年4月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)