血友病―関節の腫れや長引く内出血、大きなたんこぶに用心
2013年03月07日 12:01
けがをして出血すると、普通は血液が固まって傷口をふさぐ。しかし、その力が遺伝的に弱い血友病では、ぶつけた体の一部が大きく腫れて紫色になったり、膝や足首の関節が腫れたりし、そのまま放置しておくと最悪の場合は障害が残る恐れがある。身近な親族に患者がいれば早く病気に気付けるかもしれないが、核家族化が進んだ現代では祖父母のきょうだいや曽祖父母の病歴まで把握することは難しい。東京医科大学病院輸血部の福武勝幸部長は、長引く内出血や大きなたんこぶ(頭出腫)などが血友病の兆候となっている可能性もあるとして、注意を呼び掛けている。
患者のほとんどが男性
血友病は出生する男児1万人に1人の割合で見られ、性別の決定に関わるX(エックス)染色体の遺伝子変異によってもたらされる。ただし劣性遺伝子のため、X染色体が対をなす女性は一方が正常な限りは、遺伝的要素を持っていても発症しない「保因者」となる。日本の血友病患者数が女性の約20人に対して男性が5,000人以上と圧倒的に差があるのは、このためだ。
筋肉や関節で出血を繰り返せば、神経麻痺(まひ)や関節障害などの慢性機能障害が残る可能性もある。通常の治療は定期的に血液を固める薬を静脈に注射することで対処でき、健康な人とほぼ変わらない生活が続けられるという。
患者が自ら注射する自己注射は10歳頃から始められるが、血管内に打つため、福武部長は「患者が幼いうちは親が行う必要がある」と指導している。治療費は、国による全額公費負担となっている。
家族に患者がいなくても注意を
男児の母方の祖父が患者か、母親の兄弟に患者がいれば、出産後に検査を受けて血友病かどうか確かめることができる。一方、母親が保因者でも姉妹ばかりで祖父母の家系も女系ならば、家族に患者がいないのに生まれてきた男の子が血友病を発症することもある。また、子供が生まれる過程で遺伝子が突然変異を起こし、新たに発症するケースもある。この場合、親が子供の異常にいち早く気付いてあげることが重要だ。
福武部長は「患者やその親が、自分の家系に血友病患者がいたことを全く知らなかったケースは、全体の半分に及びます」と説明する。
たとえ家族の病歴を知らなかったとしても、重症の血友病患者は1歳頃までに症状が出るため、適切な治療を受けられる。しかし、問題は症状が軽い場合だ。子供が走り始めてから、あるいは中学高校の部活動で激しい運動をするようになってから、思いがけないけがをきっかけに血友病と判明することもある。
このため、福武部長は「ぶつけた部分の内出血がなかなか消えなかったり、たんこぶが異常に腫れたりした場合は、放っておかず早めに小児科や血液内科の医師に相談してほしい」と話している。
(編集部)