薬物治療の要となる「メトトレキサート(MTX)」
2013年04月15日 18:00
3-1 MTXってどんな薬?
関節リウマチの薬物療法の要となる薬がメトトレキサート(MTX)です。2011年2月に使用してもよい最大用量が8mg/週から16mg/週まで引き上げられ、治療の最初に用いる薬剤としても使えるようになりました。
MTXは、細胞の分裂や増殖に必要なビタミンの一種である葉酸の働きを抑えます。リウマチでは免疫機能に異常が起こり、関節の滑膜細胞や、白血球やリンパ球などの免疫細胞が活発に増殖しています。MTXはこうした免疫系の細胞を抑える「抗リウマチ薬」であり「免疫抑制薬」でもあります。
関節リウマチでは世界で最もよく使われている薬で、服用開始から2〜4週ほどで効果が表れます。効果が高く、副作用を調整するのも比較的容易で飲み続けられる人が多く、薬剤費も比較的安価です。ジェネリック(後発医薬品)も出ています。
もし十分な量のMTXを服用していても効果が弱い場合には、生物学的製剤を使うことが多いのですが、こうしたケースでもMTXを服用し続けることで生物学的製剤の効果を高めることができます。その点からも、MTXが薬物療法の要であるといえます。
3-2 MTXを始める前に行う検査は?
MTXは免疫を抑えて関節リウマチの異常な免疫反応を抑えますが、半面、感染症にかかるリスクを少し高めてしまいます。そのため、結核などの肺疾患や肝炎の有無を服用前に検査します。肺疾患や肝炎ウイルスが見つかった場合には、それらの治療を先に行います。
MTXを始める前の主な検査
3-3 MTXの服用方法は?
1週間当たりの服用量を1回または2〜4回に分割して、約12時間間隔で1〜2日間かけて服用します。例えば、1週間当たりの服用量が6mgで週末に3回に分けて服用する場合、土曜日の朝食後に2mg、夕食後に2mg、日曜日の朝食後に2mgを飲み、月〜金曜日は休薬といったスケジュールになります。服用し始めてから4〜8週間たっても効果が不十分な場合は、8〜16mg/週まで徐々に増量します。
このように服用方法が複雑なため、誤って毎日続けて服用してしまい、白血球減少症などの副作用を起こす人が出ています。徐々に増量するなど服用量も変わることがあるので、MTXの量と飲み方には細心の注意が必要です。服薬チェックシートを作るなど、服薬管理をきちんと行いましょう。
3-4 MTXの効果と副作用は?
関節リウマチの治療薬としてMTXが承認される際に行われた、日本人関節リウマチ患者150人を対象にした臨床試験成績によると、約6割の人が改善したと報告されています。早期からMTXの十分量を服用するだけで寛解に至る人の割合は約3割といわれています。
MTXの副作用には、消化管障害(口内炎や下痢、食欲不振)、肝機能障害、脱毛がありますが、これらは葉酸を補給することで防げます。MTXを内服する患者さんのほとんどが、予防のために葉酸製剤を服用しています(MTXを服用してから24〜48時間後に5mg服用)。MTXは葉酸の働きを抑えることで効果を発揮する薬剤なので、葉酸製剤はその効果を弱めます。そのため、MTXと葉酸製剤の補給は、副作用と効果のバランスを取りながら行うことになります。葉酸は緑黄色野菜やレバーに多く含まれていますが、食品として摂取する分には問題ありません。しかし最近では、葉酸を含む栄養補助剤(サプリメント)が数多く売られていますので、サプリメントを使用する際には注意が必要です。
MTXの服用量が多くなり、血中濃度が高くなると、吐き気や食欲低下、倦怠感が起こる人がいます。吐き気止めの使用などで改善することも多いので、自己判断で中止しないで医師に相談します。
特に注意すべき副作用として、間質性肺炎があります。服用している人の約1%に見られるといわれます。命に関わることもあるため、早期の発見と対策が重要です。もし服用中に発熱や空せき(たんが出ないせき)、息切れの症状が見られた場合には、速やかに診察を受けましょう。
3-5 MTXを服用できない人は?
肝臓にある程度の障害がある人は、MTXを服用できません。高齢者や臓器障害のある人、肝障害の心配がある人では、慎重に経過を見ながら服用します。
妊娠中や授乳中は服用できません。妊娠を希望している人は、男性も女性も少なくとも3カ月前には服用を中止します。
MTXが服用できない人は、MTXを併用しなくても使える生物学的製剤、従来の抗リウマチ薬、免疫抑制薬などから使える薬剤を選びます。