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日本は大丈夫? 麻疹流行中の英国で風疹の流行も懸念

 2013年05月10日 12:00

 日本ではついに、今年初めからの風疹(三日ばしか)報告数が5,000例を超えた。麻疹(はしか)風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種が不十分な20~40歳代の男性が流行の中心だが、これに伴い、妊婦への風疹感染が増加。この1年での風疹による先天障害(先天性風疹症候群)の報告数は8例に上っている。一方、昨年から麻疹の記録的流行が続いている英国では、ほぼ同時期から風疹の報告数も増加しており、こちらの流行も懸念されている。5月7日付の英医学誌「BMJ」公式ニュースが伝えた。同誌では「現在の麻疹流行は、将来的な風疹の流行に対する警告」との専門家のコメントも紹介されている。その理由を読むと、日本でも同様のリスクが潜んでいそうだ。

最新の風疹(三日ばしか)発生報告数と年間推移を見る

麻疹流行は風疹流行の警告

 英イングランド公衆衛生サービス(PHE、旧・英健康保護局=HPA)によると、昨年の英国における麻疹報告数は2,016例で、1994年以来の流行を記録している。一方、同国内の風疹報告は2009年に9例、10年に12例、11年には6例だったのが12年には65例に増加。この数は1999年以来の多さで、現時点で感染者の大半は特定の地域に住む、最近の移民だという。

 同誌では、英国における最近の風疹流行は1996年、当時の報告数は4,000例に上ったことを紹介。英国の先天性風疹症候群調査プログラムの責任者であるPat Tookey氏は、同誌の取材に対し「現在の麻疹流行は、将来の風疹流行の警告と捉えるべき」との見方を示している。

 今のところ、報告のほとんどは海外から移住してきた人だが、Tookey氏は「幼少期に(英国で定期接種されている)麻疹、風疹、ムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)混合ワクチン(MMRワクチン)を接種したことがない集団がいる。この人たちは、麻疹やムンプス同様、風疹に対する抗体が不十分」とも述べている。その上で今後、風疹が流行する可能性があり、そうなれば妊婦が先天性風疹症候群のリスクにさらされることになるだろうと懸念を示している。

 同誌によると、英国では1970年に女子学生のみを対象とした風疹ワクチン接種を開始。先天性風疹症候群の減少に成功したものの、風疹の流行は抑えられなかったため、先天性風疹症候群の発生がゼロにはならなかった。その後、MMRワクチンを幼少期に2回接種する方式を導入。日本と似たワクチンプログラムを採用、制度変更を行ってきたが、いずれも麻疹、風疹の制圧には至っていない。

当局は楽観視

 同誌では続いて、先天性風疹症候群の一部である視力障害や聴力障害のサポートに当たる慈善団体関係者Joff McGill氏のコメントを紹介。同氏は「麻疹に続いて風疹が流行するのを見過ごせない。妊婦やまだ生まれてこない赤ちゃんを守るため、今の状況が悪化するのを防ぐために行動しなければならない。予防接種は幼少期だけの問題ではない」と、未接種者が多い若年層の予防接種率向上に取り組むべきと訴えている。

 一方、「風疹の地域流行は非常に考えにくい」とのPHE広報担当者のコメントも紹介されている。担当者は「風疹は麻疹ほど感染力が強くないから」と理由を述べている。また「妊娠を考えている女性は自分のMMRワクチンを接種したかどうかを確認し、記憶が曖昧ならかかりつけ医に相談を。すでに妊娠している場合は、出産後にワクチンを接種すべき」と、女性へのワクチン接種を勧めるにとどまっている。

 興味深いことに、同誌は英ウェールズの公衆衛生当局にも同じ取材を実施しており、同広報担当者もまた「風疹流行の懸念は全くない。麻疹ほど感染力は強くないから」と楽観的な見方を示している。記事は、ウェールズでは麻疹流行に伴い予防接種キャンペーンが行われているが、麻疹の報告は増え続けていると指摘。流行の中心である10~18歳のうち4万3,000人がいまだにワクチン接種を受けていないと締めくくっている。

(編集部)

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