糖尿病患者のがんリスク1.2倍、2学会の合同委員会が発表
2013年05月16日 12:00
糖尿病とがんの関連が世界的に注目される中、日本糖尿病学会と日本癌(がん)学会の合同による「糖尿病と癌に関する委員会」(委員長=国立国際医療研究センター・春日雅人総長)は5月14日、東京都内で記者会見を行い、糖尿病によるがん発症リスクや、糖尿病ががんの発生を促すメカニズム、共通する危険因子などの検討報告を発表した。糖尿病患者ががんにかかるリスクは、糖尿病でない人の1.2倍だったという。
肝臓がんでは2倍近くに
今回の報告書でまとめられたのは主に,(1)糖尿病患者のがん発症リスクに関する評価,(2)想定される糖尿病患者のがん発生メカニズムと両者に共通する危険因子の評価,(3)糖尿病治療薬とがん発症リスクの疫学的評価―の3点。春日委員長が報告書を基に解説した。
(1)については,日本最大規模の研究(JPHC)のデータや,日本の糖尿病患者のがんリスクを解析したデータなどを,国内外からの報告とともにそれぞれ評価。中でも,委員の一人である国立がん研究センターがん予防・検診研究センター(東京都)予防研究部の津金昌一郎部長らによる、日本で行われた8研究の解析結果が注目された。
それによると,解析対象約33万5,000人のうち,がんにかかったのは約3万3,000人で,糖尿病患者のがんリスクは糖尿病でない人の1.2倍。がんの種類別で見ると,肝臓がん(1.97倍),膵臓(すいぞう)がん(1.85倍),大腸がん(1.40倍)の順に高いことなどが分かった(表)。
なお,統計学的な差は認められなかったものの,子宮内膜がんや膀胱(ぼうこう)がんではリスクが高まる傾向にあった一方,乳がんや前立腺がんでは,これまで報告されていたようなリスクの増減は示されなかった。
健康的な生活やがん検診の受診を
糖尿病とがんに共通する危険因子として,加齢,男性,肥満,低身体活動量(運動不足),不適切な食事,喫煙・過剰飲酒が挙げられた。つまり,糖尿病患者が行っている食事療法や運動療法、禁煙・節酒が,がんリスクの減少につながる可能性を示した。
報告書の最後では,医療従事者や患者などへの提言が盛り込まれた。健康的な生活習慣のほか,エビデンス(科学的証拠となる研究結果)に基づいて行われているがん検診についても推奨。特定の糖尿病治療薬によるがんリスクとの関連は"限定的"として,良好な血糖管理による利益を優先した治療が望ましいとしている。
(編集部)