風疹予防接種後に妊娠判明しても「中絶の考慮は不要」
2013年05月22日 18:38
風疹の流行が続く中、妊娠年齢の女性などが風疹ワクチンを接種する機会が増加しているが、それに伴って医療機関へ「接種後に妊娠が判明したがどうすればよいか」との相談が増えているという。妊娠中に風疹の予防接種を受けると、胎児に先天的な障害(先天性風疹症候群)が発生する可能性があるためだ。厚生労働省研究班は5月20日、風疹ワクチンや麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を接種した後に妊娠が分かった場合でも、人工妊娠中絶などを考慮する必要はないと考えられるとの見解をまとめ、日本産科婦人科学会などに緊急周知を行った。同時に、女性がワクチンを接種する際、接種前1カ月間と接種後2カ月間は避妊することを説明するよう求めている。
誤接種数千例で先天異常の報告なし
風疹ワクチンやMRワクチンは、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)や黄熱などのワクチンと同じ弱毒生ワクチン。このワクチンは接種後に体内でいったんワクチン株(毒性を弱めたウイルス)が増えることから、風疹の予防接種を受けた時に妊娠していた場合、胎児への感染するリスクはゼロではないと考えられている。そのため、日本では接種してから2カ月間の避妊(米国では1カ月)が勧められている。
インターネット上でも「最近、風疹ワクチンを接種した。その後、妊娠に気づき、産科を受診したら妊娠初期と診断された。かかりつけ医に中絶を勧められたがどうすればよいか」「接種後に産科で妊娠が判明し、中絶を勧められたが、別の病院では"大丈夫"と言われて悩んでいる」など、悩む女性の声が見られる。
日本だけでなく海外でも、妊婦に風疹のワクチンが誤接種されているケースは少なくないようだ。今回の情報提供では、ブラジルでの誤接種例2,292人の報告を提示している。それによると、予防接種で抗体価が上がった288人(全体の12.6%)のうち、75%が妊娠5週以内の接種と考えられたが、先天性風疹症候群を持つ子供の出生は見られなかったとの結果が示されている。
日本でも、過去に全国で集計された800例ほどの妊婦に対する誤接種例のうち、先天性障害はなかったとの報告もある(加藤茂孝氏「妊婦への風疹ワクチン接種の安全性」日本医事新報 1989; 3418: 43-45)。
男性は避妊不要、授乳中の接種も「問題ない」
同研究班は医療機関に対し、何らかの懸念がある場合は産科二次施設に相談するよう助言するとともに、ワクチンの添付文書にあるように「妊娠可能な婦人においては、あらかじめ約1カ月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2カ月間は妊娠しないよう注意させる」の説明を徹底するよう呼び掛けた。
なお、男性の場合はワクチン接種後の避妊の必要性はない他、『風疹と母子感染2012年版』では産後早期、授乳中のワクチン接種については「問題ない」との見解が示されている。
(編集部)