夜勤経験のある女性で卵巣がんリスク上昇―米研究
2013年05月24日 18:00
がんと概日リズム(サーカディアンリズム、体内時計)の乱れは関係するといわれている。夜勤は概日リズムを乱すリスクが高い勤務形態だが、夜勤の経験がある女性では卵巣がんになるリスクが高まると、米フレッドハッチンソンがん研究センター公衆衛生学のParveen Bhatti氏らが英医学誌「Occupational and Environmental Medicine」(2013; 70: 231-237)に報告した。
良性と悪性の中間型腫瘍のリスクも上昇
国際がん研究機構(IARC)は、正常な概日リズムを乱すシフト勤務を、発がんリスクの「グループ2A(恐らく発がん性である)」に分類している。これは、子宮頸(けい)がんを引き起こすとされるヒトパピローマウイルス(31、33型)や、皮膚がんに対する紫外線、ディーゼルエンジンの排ガスなどと同じカテゴリーで、印刷会社で胆管がんが相次いだ問題の"真犯人"「1、2ジクロロプロパン」よりも危険度は高いとされている。
Bhatti氏らは今回、浸潤性(がん細胞が周りに広がっている状態)の上皮性卵巣がん患者1,101人、上皮性境界悪性腫瘍(良性と悪性の中間)患者389人、卵巣に腫瘍がない1,832人(対照グループ)を対象に、夜勤経験の有無と卵巣がんリスクの関連を検討した。被験者の年齢は35~74歳。勤務時間や夜勤経験の有無などについては、対面による聞き取り調査を行った。
全体の夜勤経験者は831人(25%)で、平均年数は2.7~3.5年、主な職種は医療関係、調理・外食サービス、事務・管理サポート(電話交換手など)だった。また、卵巣がんグループでは、対照グループと比べて経口避妊薬(ピル)の使用率が低く、出産回数が少ない女性が多い傾向にあった。ピルの使用や出産歴は、卵巣がんリスクを減らす因子として知られている。
解析の結果、日中勤務のみの女性と比べて夜勤経験のある女性では、浸潤性の上皮性卵巣がんになるリスクが24%、上皮性境界悪性腫瘍になるリスクが48%高かった。年齢層別に見ると、夜勤経験と卵巣がんリスクの上昇に関連が認められたのは、50歳以上の女性に限定されたという。
"朝型人間"では夜勤によるリスク特に高い?
今回の研究では対象者に、自分が午前中に活発に活動する"朝型人間"か、夜間に活発に活動する"夜型人間"のいずれに当てはまるかについても質問したところ、夜勤経験者の割合は"夜型人間"の女性に多く、"朝型人間"の女性では20%だったのに対して"夜型人間"の女性では27%だった。
解析の結果、統計学的な差は認められなかったものの、"夜型人間"の夜勤経験者よりも、"朝型人間"の夜勤経験者の方が卵巣がんリスクが高い傾向にあった。境界悪性腫瘍リスクについても同様だったという。
Bhatti氏らは「今回の結果は、夜勤の経験と乳がんに関するこれまでの研究結果と一致していた」と結論。一方で、「今回の研究では、夜勤を経験した期間の長さと卵巣がんのリスク上昇との間に関連は認められなかった」とコメントしている。
同氏らは、夜勤経験と卵巣がんリスクとの関連には、概日リズムや睡眠に関わるホルモン、メラトニンが関与している可能性を指摘している。メラトニンはエストロゲンなどの生殖系ホルモンの分泌を調節しており、通常は夜の間に作り出されるが、夜間に照明を浴びることで産生が抑えられることが分かっている。
(編集部)