汗が過剰に出て困る「多汗症」、皮膚科で改善の可能性
2013年06月07日 11:39
手のひらや足の裏などに多量の汗をかいて、仕事や勉学に支障が出るといった状態に対し、病院以外での不適切な処置や、治療を受けないままで悩みを抱えている人が少なくない。多摩南部地域病院(東京都)皮膚科の藤本智子医長は「原発性局所多汗症という病気です。症状に応じて段階的な治療法を行うので、多量の汗で困っている人はまずは病院を受診してほしい」と呼び掛ける。
10代での発症多い
原発性局所多汗症は、明らかな原因がなく、頭、脇の下、手のひら、足の裏といった限られた部位から汗が過剰に出る状態が6カ月以上続く。10歳代後半頃までの発症が多く、わが国では人口の約5.3%がかかっていると報告されている。
汗はエクリン汗腺という器官から分泌される。汗腺は全身に分布しているが、手足、脇の下に集中している。多汗症の人も正常の人も汗腺の構造、数は同じだ。
藤本医長は「汗腺には"働き者"と"怠け者"の2種類があって、多汗症の人はほとんどの汗腺が"働き者"なのです」と説明する。
20~30歳代の働き盛りの頃になると汗の量が頂点に達する。日常生活に支障が出るほどで、美容師や看護師など人の体に触れたり、販売業などの接客をしたりする職業の人にとっては、汗のせいで転職しなければならなくなることもある。命に関わる病気ではないが、困り具合でいうとアトピー性皮膚炎、乾癬(かんせん)に匹敵するという。
軽症なら塗り薬
治療は、2010年に日本皮膚科学会が指針を制定、一定の方向性が示された。症状が比較的軽い場合は塩化アルミニウム液の塗り薬が使われる。また、患部を水道水に浸して弱い電流を流す「イオントフォレーシス」という治療法は、特に手のひら、足の裏で効果がある。
症状がもう少し重くなれば、ボツリヌス毒素を患部に注射する治療法もある。ボツリヌス毒素は、汗腺の交感神経で発汗に関係しているアセチルコリンという物質の放出を遮る。手のひらに関しては、手術で発汗に関係する交感神経を遮断する方法もある。
「患者さんが多い割に受診率が低く、深刻です。適切な治療によって症状が改善する可能性は高いので、信頼できる皮膚科を受診してください」と藤本医長は呼び掛けている。
(編集部)
2012年8月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)