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サイバーエージェントで風疹の集団予防接種を実施

 2013年06月07日 17:52

 成人男性を中心とした風疹の大規模な流行が続いており、各国では日本への渡航注意情報も発表している。そんな中、5月23日にネット事業大手のサイバーエージェントが、「社員と周囲の妊婦を守るため」全社員3,000人を対象とした予防接種の費用全額補助と、社内での集団接種を行うことを発表し、注目された。企業での集団接種や費用の補助により、流行を食い止めるカギとなる成人の予防接種率の向上が期待されるが、いったいどれくらいの人が接種したのか。5月下旬から6月初めにかけ、4日間行われた同社の集団接種最終日の模様を取材した。

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意義は「危機管理と社会的責任」

 全社員を対象とした予防接種費用の全額補助と社内での集団接種を実施した決め手は何だったのか。同社広報部は「報道や国立感染症研究所などの発表で、風疹の流行が社会的問題となっていることを知った人事本部長が、費用全額負担での麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種を打診し、社長が即決した」と話す。

 3,000人分の接種費用となると、かなりの金額だ。広報担当者も「コストとしては、決して負担は小さくない」と言い切る。しかし、「社員の平均年齢が29歳と若く、現在の風疹流行の中心となる年齢層。流行の影響で風疹にかかる、あるいは社内での感染が拡大した場合の企業の損失は無視できない」と、予防接種による危機管理としての意義が大きさを強調。

 また、社員だけでなく社員の家族が妊娠中の場合も少なくないほか、女性や子供を守る社会的責任も同様に重要とした。

接種率は7割

 企業の経営陣が危機管理上必要と判断しての取り組みだが、「仕事が忙しいから」「注射、嫌いだし...」などと受けなくても、会社からペナルティーがあるわけではない。しかし、就業開始から間もない時間にもかかわらず、途切れることなく社員が接種に訪れる。最終日前の時点で、「社長や幹部社員以下、3,000人のうち7割くらいは接種したのではないか」(広報担当者)。社内ではどんな取り組みが行われたのだろうか。

 会社の公的な呼び掛けは、全社員向けに一度メールをしたのみ。ただ、仕事柄、全社員が「ツイッター」や「フェイスブック」など複数のソーシャルネットワークツールを活用しており、「今日、MRワクチンを接種してきた」「全然痛くなかったよ」などと、社内での集団接種に関する情報が常に飛び交っている状態という。

 さらに、「これまでも、インフルエンザワクチンの接種費用を全額補助し、健康保険組合から医師を派遣してもらい、社内で集団接種を実施してもらっていた」(広報担当者)ことも、接種率を高めた要因だろう。こうした取り組みから同社の社員は、予防接種による健康管理の意識が高かったとも考えられる。

名古屋、大阪、福岡の支社でも接種を支援

 今回の集団接種への反響は大きく、4日間の集団接種期間中に多くのテレビ局、新聞社だけでなく複数の区から議員や保健所関係者が視察に訪れたという。広報担当者は「問い合わせも多く、反響の大きさに驚いている。社内での集団接種がこんなに特殊な事例だとは思っていなかった」と、率直な感想を話してくれた。

 同社では今後、大阪支社でも社内での集団接種を実施するほか、比較的小規模な名古屋と福岡の支社では、会社側が平日昼間に近くの医療機関を予約し、接種のための受診を支援する準備を進めているようだ。広報担当者は「風疹の本格的な流行期が夏頃と聞いたので、予防接種による抗体獲得までの時期を含めて逆算した上で、医療機関との調整を早急に行った。流行がさらに拡大する前に備えられてよかったと思っている」とコメントしている。

「費用補助なく"どこかで受けてきて"では行かない」との声も

 若い女性社員の一人は「小さい頃から大の注射嫌いで、予防接種に行くたびに大泣きしていた。その場で接種できないことが重なり、必要な予防接種をほとんど済ませていないと親から聞かされた。今回、テレビで風疹流行のニュースを見た父親や会社から接種を勧められ、ようやく決心して受けた。費用を全額補助してもらえるだけでなく、社内でやってもらえるのはありがたい」と話した。

 「今回の予防接種を契機に、他の済ませていない予防接種を今後受けようと思ったか」との問いには、「今回のように費用の補助もなく、ただ"どこかに受けに行って"と言われても、ちょっと行く気にならない」と答えていた。

 なお、4日間にわたり行われた同社内での集団接種には、ナビタスクリニック(東京都、神奈川県)の久住英二理事長(内科)らが対応。1日につき、予診と接種を担当する医師3人、診療補助とワクチン調整を行う看護師3人、予診表の確認や受付を行う事務職員1人で約600人の社員への接種を実施した。

(編集部)

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